149.凡字形石器。腹面は川原石の自然面を残しフラットである。これを打面として剥離を繰り返えし,三角錐状の概形に整形した後,背面の部分的な調整剥離を行なっている。基部は握りやすく細部調整して,両側を垂直に近く剥取し,背部に縦長剥離面が基部から頭部へかけてつくり出されている。頭部の平担面は多方向からの打撃を繰り返してつくり出している。最も多く剥離しているのは基部から頭部へかけてのくびれ部で,両側面ともかなり入念に調整しているが,右側面には取りきれなかった高まりがある。頭部の平担面と腹面とのなす角度は90°に近い。腹面のエッジはリタッチはないが鋭くない。各面にも摩耗痕は認められるが,強いていえば頭部の平担面で,中央部分の剥離面の稜・左側エッジにそれらしき兆候がある。硬砂岩の川原石が原材料・腹面右側には自然面のとき,ひび割れにサビが入った跡が見える。重さは620g。片手で振うに手頃な重さである。
150.凡字形石器? 三角錐状を呈するが剥離痕が明瞭でない。人為的に割ったものではあるが細部を整形した様子はなく,腹面はフラットながら弯曲している。背部は尖った鋭い稜をなし,基部は握っても細すぎて力が入りにくく,稜が掌を圧迫する。頭部はフラットで摩滅(人為的か原石のものか不明)している。頭部の両側は調整剥離を何回か行なっている。原材は河床礫ではなさそう。砂岩。重さは270g。
151.凡字形石器。フラットな面をもつ硬砂岩の河床礫を原材料としたもの。採取した時にすでに表面に鉄分付着に伴う酸化があったもので,黄褐色を呈している。三角錐状を呈するが,背部の稜,頭部の平担面はかなり摩耗している。腹面は原材の自然面をそのまま利用。腹面の平担面を打面として大割りして三角錐状に整形し,各面に再調整剥離を加えて成形する。基部の側面は垂直に近く剥取整形し,稜の部分も握るのに適するようリタッチしている。基部上方から頭部にかけての背部は稜をなさず平担化した剥離を行なっている。腹面と頭部平担面とのなす角度は鋭角で,垂直に近いこの種の石器のうちでは三角錐の形状がやや変形ぎみである。頭部平担面は剥離部分の稜が摩粍して剥離面が不明瞭である。両側面には摩粍がなく打痕がよくわかるが,背部の,基部の稜や頭部あたりの平担化し剥離面には稜がはっきりしないほどの摩粍がみられる。重さ765g。
152.磨製石斧。T3土壙から出土。使用時の衝撃で,刃部,腹面,側面の三カ所を破損している。刃部を固い物体に激しく打ちこんだため,その部分が砕けると共に上方へ衝撃が及んだためであろう。癈棄物である。グリーンの砂岩で加工しやすい材質。そのせいか丁寧に面取りしきれいに仕上げているが,割れやすい石材である。
153.磨製石斧。T1―Ⅰ区第4層出土。基部に整形時の剥離痕が若干残るが,実に丁寧に磨き,平滑で表面はつやつや輝く緑色の美しい仕上げである。使用時の衝撃で刃部から基部へかけて一面を大きく破損したので,磨きなおして再生しようとしたもの。そのため片刃になっている。刃部は調整不完全であるので途中で止めたのかも知れない。泥岩(頁岩)が原材料。ふつう砥石の原料になる石なのでやわらかく研磨しやすくきれいに仕上るのだがショックには弱い石である。
154.硬玉製有孔石器(装身具)。T3の▲地点で出土。河床礫を研磨したのだが不充分で自然面が残っており整形も不完全。上からみると長方形,横からみると菱形に近い。平面図の左側から穿孔したが貫通まぎわに右側から小さい穴をあけて貫通させたため,貫通孔には段差がある。うす緑の硬い石質で部分に濃い緑の斑がみえる。水に濡らすと緑が濃くなりつやつやと美しい。玉髄(石英の仲間)の小さな河床礫を原材料としたもの。入手しにくい石なのか,加工しにくいせいなのか,研磨不充分の自然面が残っても穿孔して完成品としている。
155.小型棒状石器。T1―Ⅴ土壙内から出土。河床礫の自然面を4面の面とりをしたように砥いでいる。一端が先端部から衝撃で欠損している。他の一端は頂点の周囲に敲打痕があり,これに近い部位の面に敲打の傷跡がみえる。この傷跡は3つ面のほぼ同じ位置にあり,棒状石器の先端部部寄り部分を敲打に使用したことがわかる。堅果を割るハンマーではなかろうか。斑糲岩の河床礫を原材料としたもので黒ずんだ固い石である。