わがふるさとの山河は美しく豊かであります。幾多の歴史的変遷を辿りながら、教育を盛んにし、香り高い文化を育ててきました。
黒羽はみどり美しい八溝山地と那珂川の清流がせゝらぐ田園地帯に開けた町であります。
この美しい風土に那須氏の傘下で活躍した大関氏が、ながくこの地方を支配し、貴重な藩政資料と静かな城下町のおもかげを、今も残しています。古道が通じ、伝説の宝庫であります。舟運も開け、元禄期には芭蕉の滞留もあり、これらの旧跡は比較的よく保存されています。
雲巌寺・大雄寺などの名刹があり、スギ・ヒノキの良材も産出し、厳しい自然のなかに神々と共存してきた稲作人の誠実な心が今も温かく生きていて、人情の厚い町であります。
私たちは人間性をたいせつにしながら、主体性と創造性を培って、より豊かで、より住みよい活力ある町づくりをめざし、英知と連帯の輪とを固く結びながら前進しています。
黒羽町では歴史的発展の経過を省み、将来あるべき姿を指標としながら、歳月を重ねて研究調査し、町民の座右に備えて活用して戴きたく、こゝに黒羽町誌を編さんし、このたび発刊することになりました。なおこの町誌が愛郷心を培う上にも役立つならば、まことに喜ばしいことであります。
刊行につきましては、多くの方々から資料の提供と御指導を戴きました。こゝに厚く御礼申し上げます。終りに困難な編集などに当たられました各位に対し深く謝意を表します。
昭和五十七年 三月