黒羽町地内北部(糠塚原(ぬかつかはら)―三滝(みたき)―桜田―阿寺(あでら))と蛇穴新田―腐沢〈茨城県大子町〉とを結ぶ線)の「八溝山地断面図Ⅰ」および「断面位置図Ⅰ」は別葉の通りである。(注、この断面図は平面距離より高度の比率を大きく表現してある。)この断面図Ⅰをみても冒頭にふれたように黒羽町内の地形区が八溝山地・那珂川の洪涵地・那須扇状地に大別されていることを証することができる。八溝山地の山容は、浸食のため、いくつかの峯に分れ、八重垣山の景観をみせ、険しさを汲みとることができる。県境付近の標高は約七〇〇メートルもある。また武茂川(むもがわ)と大川沢間、大川沢と浅ヶ沢間の山頂標高は両者とも五五〇メートル位で御亭山位である。これに対し西縁の丘陵性の山波は最高でも木佐美―大久保間が三〇〇メートル、大久保―中野内間二五〇メートル、中野内―上大輪間、三〇〇メートル程であまり高くない。
西の前松葉川と東の松葉川とが両郷の開析谷を形成している。両郷の名は前松葉川沿いの前郷と松葉川沿いの後郷(西(にし)郷と呼ぶことが多い)の二つの郷があることに由来するという。
西郷の丘陵端が那阿川に臨む要害地に高館(たかだて)(那須資隆の居城と伝う)があるが、その標高は二九〇メートルである。
寒井糠塚原(さぶいぬかつかはら)はなだらかな岡で、その高さは二五〇メートル位で赤松が美しく、平地林が残存している。この辺り那珂川のある位置が一八〇メートル。大輪(おおわ)の段丘上が一九〇メートル、長谷田沢の奥付近で二五〇メートル、西郷の低地が二一〇メートル程、前郷低地で二二〇メートル、木佐美の平地二五〇メートルである。阿寺付近は約四〇〇メートルもあり、かなりの高度である。