浸食された八溝山地
次の略図は御亭山塊の稜線を示したものである。(原図、二万五千分一地形図)小手の名に相応しくこじんまりした山であるが、麓から山頂に向って見事に浸食されているさまをみることができる。
御亭山塊稜線略図
これは岡沢・日暮(ひぐれ)沢(平群沢とも書くことあり)・柳沢・小手沢(竜沢とも言い、立沢とも誌す)・亀久川・柏久保沢・木曽分川・野上川などの諸川により浸食されて形成されたものである。御亭山塊の山々は八溝山や笹岳のような高山とは言えない。主峰の御亭山が五一二・九メートルである。山頂は二峰からなる。今、この二峰を希望が峰と憩が峰という。むかしは、金剛(こんごう)・胎蔵(たいぞう)の両界の山と称し、信仰の対象とした。山岳信仰の時代である。憩が峰(頂上)を少し下った所に綾織池(あやおりいけ)があり、豊玉比古(彦)命・豊玉比女(姫)命を祀る綾織神社がある。こゝは小手沢の水源池となっている。こゝに豊饒の神(竜神)にまつわる伝承がある。
黒羽町地内八溝山地の地形図(二万五千分の一)に標高が記載してある山々は百九十八峰もあるが、標高別の峰の数は次の通りである。
(標高) (峰数)
一九〇~一九九メートル 五
二〇一~二九八メートル 三三
三〇〇~三九八メートル 六二
四〇〇~四九七メートル 四六
五〇〇~五九六メートル 三二
六〇一~六九一メートル 一三
七〇四~七七一メートル 六
平均四二一・三メートル、 一六三
なお黒羽町地内での最高地は、栃木県と茨城・福島両県との境界付近で八六〇メートル位であり、最低の土地は矢倉南端で一一五メートルである。