日本人の生活に最も適する気候は一五~一七℃であるといわれているが、次の図は「栃木県の年平均気温分布図」である。生活適温に近い一四℃の等温線が佐野を通っている。
栃木県の年平均気温分布図
(『栃木県の気象』による)
また一二℃の等温線がほぼ平野部の外縁を走っていることがわかる。その内側に一三℃の等温線がある。黒羽をはじめ、鹿沼・喜連川・大田原・馬頭・茂木・益子などの各地を連ねている。年平均気温一三℃は、日本森林帯区分の暖帯と温帯の境界線であるという。気温は標高を増すと低くなる。日光中宮祠では六・六℃、那須湯本で一〇・一℃となっている。県都宇都宮の年平均気温は一二・四℃で、大体一五℃以上の月は五―十月の半年間だけである。
長野の三沢勝衛氏(注)(風土地理の研究家であった)によると、一年中の主な風の方向は柿の木などの枝の方向で知ることができると言ったが四月中頃から八月終りか九月初旬まで南よりの季節風が吹く、夏は気温も高く降雨もありむし暑さが続く。冬は北寄りの季節風が吹く、九月の末頃から三月の初め頃までである。この風は那須颪(おろし)とよばれる乾いた風、空(から)っ風である。そのためか冬は寒さを厳しく感ずる。また畑の軽い土を飛ばす。那須野などには防風林が特異の存在をなす。
九月を中心に台風の季節がある。強い熱帯低気圧の頻度が重なる。九月は晴天日も多いが降水量も多い。台風の害を受けることもみられるが、南国に比しまだ恵まれた方である。
霜の期間は長い。宇都宮で百七十七日位である。
次の図は栃木県の年降水量の分布図である。
栃木県の年降水量分布図(単位mm)
((『栃木県の気象』による)
雨量は山岳地から平野部に移るに従って漸移的に変化し、山岳地の二〇〇〇―二三〇〇mmから平野部の一二〇〇―一五〇〇mmと少なくなる。一年中、雨の多いのは七・八月の雷雨性降雨と九・十月の秋霖と台風による雨が多い。
雷は日光雷・高原雷とよばれるように、西部山地の那須・高原・日光・群馬県の赤城などの山々、東部山地の八溝山・筑波山に起ったものが来る。また遠く関東山地から到来する雷雨もあり、近江盆地とともに雷雨の多い地方の一つである。旱天続きの雷雨は陸稲(おかぼ)などの夏の畑作物の恵みの雨となる。しかし雷雨に伴う雹害は大きく、各地に雷神社がみられる。
冬に雪が多いのも西部山地で積雪量が多い。