黒羽町は、北東に八溝山(標高一〇二二・二メートル)、東に御亭山(五一二・九メートル)、一番低い場所は、片田方面の一四〇メートルであり、川西を除いては山間傾斜地である。八溝山は主として中古世代の堆積岩類で中生代末期に貫入した花崗岩類からなつている。(八溝山の地質は栃木県史による)。八溝系の地質はおゝよそ前松葉川の東で、両郷・河原・中野内・久野又の一部を除いては新生代である。八溝山系の土質はごく一部の花崗岩や花崗岩風化土を除いては、極めて土質がよく、場所によつては杉など山麓より峠まで同じに生育する。特に大久保の羽黒山、奈良土沢、御亭山周辺、須佐木須賀川方面の杉は材質もよく生育もよい。須佐木、須賀川は八溝系の地質でコンニヤク・お茶の産地として有名である。
一方、前松葉川の北西、後松葉川・那珂川周辺は沖積層(土性は植土壌である)が分布している。この地方は水田及び畑が多く、一部山林もあり杉の生育は八溝山系より劣るが、松、桧の生育はよい。特に中野内・川田方面の松の生育はよく材質もよい。桧は桧木沢の桧、引橋の桧はよいとされている。これらの水田、畑、川には種々の動植物が生息繁茂している。
黒羽地方は他に比較すれば、自然破壊は少ないが住宅の生活排水、無計画な山林の伐採、砂利採取、水田に使用する多量の農薬等により汚染され、河川は酸素の不足を招き魚類もその数を減少し、植生も除々に変化すると思われる。更に多量の農薬は小動物の命を奪い、これら小動物を食物とする動物は、その毒の蓄積により死滅するであろう。この様に自然の平衡をくずせば、食物連鎖はくずれ何年か後には絶滅するものもあろう。
以下黒羽町の動物、植物の現状と、すでに失われたものを列記する。このことは何年か後の手がかりになれば幸甚であり、個々の習性、植性などは、多くの学者が種々の研究書を出版されているのでその必要はないと考える。