本県に自生する植物栽培品の野生化したものや、外来品まで入れると一九六八年で二八三一種類であつたが、その後訂正増補して一九七二年には、およそ二八五二種類になり、近くの県にくらべると非常に多いことがわかる。すなわち、帰化植物を入れてシダ類以上の変種まで含め茨城県は、大体二〇三〇種類、千葉県はおよそ一九五〇種類、植物の豊庫である尾瀬を有する群馬県でさえ約二七五〇種類である。このように植物の種類の多いのは年平均気温十三度の線を境として、その北には北方系、南には南方系の植物が分布しているからである。
天皇陛下の御研究による那須の植物誌によると、シダ類以上の高等植物は一六一七種類であり、那須地方としては少なくない数である。
黒羽町の気象概表は次の通りである。この表は昭和四十六年(一九六一~一九七〇年の十年間)の統計値である。この統計は那須の植物誌より黒羽地方のみ抜粋したものである。
黒羽町の気象 |
単位 気温℃ 降水量mm 積雪cm |
月 | 1 | 2 | 3 | 4 | |
気温 | 平均 | 一・二 | 二・一 | 五・一 | 一一・四 |
最高平均 | 七・〇 | 七・七 | 一一・一 | 一七・五 | |
最底平均 | (一)四・五 | (一)三・六 | (一)一・〇 | 五・三 | |
降水量 | 三一 | 三六 | 七一 | 九六 | |
積雪量 | 二七 | 三〇 | 三七 | 七 |
月 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 平均 | |
気温 | 平均 | 一六・六 | 二〇・一 | 二四・〇 | 二五・四 | 二〇・九 | 一四・五 | 九・二 | 三・九 | 一二・九 |
最高平均 | 二二・七 | 二四・七 | 二八・三 | 二九・九 | 二五・五 | 一九・六 | 一四・九 | 九・六 | 一八・二 | |
最底平均 | 一〇・五 | 一五・二 | 一九・九 | 二〇・六 | 一六・三 | 九・四 | 三・五 | (一)一・九 | 七・五 | |
降水量 | 一三四 | 二三七 | 一八三 | 一九五 | 一六一 | 一三八 | 六四 | 四六 | 一三八七 | |
積雪量 | 積雪の初終日一・一五~三・七 | 一 | 九 | 三七 |
黒羽地方は前記黒羽町の気象の通り平均気温十二度九分であり、北方系の植物、南方系の植物が同時に分布し、なお大平洋型の植物・日本海型の植物も生育し、植物分布上興味深い地点である。特に八溝山・雲岩寺等には貴重な植物が生育している。