黒羽町内にある金石文で著名なものに東与瀬村新善光寺の阿弥陀銅像背銘(建長六年(一二五四))、寺宿、光厳寺旧鐘銘、応長元年(一三一一)「改鋳享保期」、大雄寺雲板銘(応永二十二年(一四一五))などがある。なお新善光寺廃寺跡からは正安元年(一二九九)銘の板碑が出土している。板碑は万蔵山、道坂(大久保)などにもみられる。道坂の十一面観世音には弘安元年(一二七八)の銘が刻してある。なお温泉神社(北野上)、三島神社(寒井)、福一満虚空蔵(大輪)、阿弥陀堂(中野内)にも古い銘のある鰐口がみられたという。
このように黒羽地方には中世における仏教文化の遺産が多くみられた。このことは東山道が文化の移入のため、重要な役割を果たしたからであろう。