(四) 徒弟教育

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 徒弟教育はすなわち職業教育であって親方が弟子を教育し、主人が丁稚を仕込むことである。
 教育方法は、系統的、具案的なものでなく、偶発的でその場その時に応じて行われ、見習い、聞き覚えの方法で指導したのである。指導方法は、厳格な鍛練を主とする硬教育であった。上達するまでは、何遍でもくり返して仕事をさせ、自奮によって要領を会得させようとしたのである。こうして一面弟子を一人前に仕上げると同時に他面では親方が自分のよき後継者を養成することも考えたのである。技術を教えるということのほかに、親方と弟子との情誼を厚くし、師弟の義理を重んじる教育であった。少年の時、親方の家に住み込む。ほとんど家族の一員としての待遇をうけ、年期が終ってもすぐには独立せずにそのまま何年かは親方の家にいて仕事を続ける者が多かった。ただ技術の教育だけでなく、全人教育が行われたのである。
 以下数種の職業について具体的に記述してみる。(古老の話)