(1)変則裁縫科仮規則

501 ~ 502
第一条 普通小学科中、女子ノ為メ変則裁縫科ヲ加フ。其目的ハ教育令第三条ノ旨趣ニ基キ、普通学科時間ヲ酌量シ、女生ヲ教フル所ニシテ、其変則ト称スルハ裁縫正則ヲ踏マズ。女子日常ノ実用ヲ達セシメントスルニアリ。

第二条 就学年齢ハ、満十年ヨリ十四年ニ至ル四ケ年ヲ法トス。

第三条 十年未満ト雖モ裁縫ヲ学ブニ堪フルモノト認ムルトキハ、就学セシムルコトアルベシ。

第四条 普通小学女生ヲ教育スルヲ目的トスルモ、学齢外(満十四年以上)ノ女子ニシテ、専ラ裁縫ヲ修メントスルモノハ、亦入学ヲ許ス。入学ノ上ハ一般ノ校則ヲ守ルベシ。

   附タリ
    授業料一ケ月金三銭ヲ収ムルコト。
第五条 習業ノ難易ヲ量リ、模範教科ヲ設ケ、毎級習業六ケ月トシ、其課程ヲ分ツ左ノ如シ。

 第一年
  第八級  直縫運針
  第七級  袖形運針
 第二年
  第六級  褄形運針
  第五級  一ツ身単衣 三ツ身単衣 四ツ身単衣
 第三年
  第四級  本裁単衣  一ツ身袷  三ツ身袷  四ツ身袷
 第四年
  第二級  本裁綿入 単羽織 袷羽織 男帯
  第一級  綿入羽織 袷小袖 綿入小袖 女帯
第六条 習業時間ヲ毎日一時間トシ、作文習字ノ科ト隔日交換シテ、之ヲ時間ニ充ツ。
    但、専門生ハ此限ニアラズ
 右の裁縫教師の月俸は弐円五十銭と定めた。この時任命された教師は、村田チヨ(四十八歳)女である。
 チヨは常陸国笠間町に生まれ、弘化二年(一八四五)正月から嘉永元年(一八四八)二月まで、笠間藩士坂部均に入門して、読書、習字を学ぶ。嘉永元年二月から安政四年(一八五七)まで、笠間藩石倉キノについて裁縫を修めた。