15 再度の私立学校作新館設置伺

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同十五年四月、再度これを願い出た。前に六年の十二月に私学開業願を出し、許可されて開校してあったのに、再度この伺書を出したのは、前者は単に私学開業であったが、後者は、時勢の進歩につれて、小学校教則による学校とするところから、改めて伺い出たのである。その書類の中には、参考になるものがあるから左に大要を掲げる。
 一、設置ノ目的 小学校ヲ設ケ、普通教育ヲ受クベキ子女ヲ陶冶ス。
 一、名称  作新館
 一、学科学期科程 本県制定ノ小学教則ヲ用ユ
 一、授業料ハ、一ケ月金二銭ヲ納ムルモノトス。然レドモ貧困ニシテ納ムル能ハザルモノハ之ヲ免除ス。
 一、生徒心得(主なるものを抽出)
(一) 毎朝早ク起キ、顔ト手ヲ洗ヒ口ヲ嗽キ髪ヲ掻キ、父母及目上タル人ニ礼ヲ述ベ、朝食事終レバ、学校ニ出ヅル用意ヲナシ、先ツ紙筆書物等ヲ取揃ヘ置キ、取落シナキ様ニ致スベシ。

但シ出ヅル時ト帰リタルトキハ、父母ハ勿論目上タル人ニハ必ズ挨拶ヲナスベシ。

(二) 席ニ着テハ、他念ナク教師ノ教ヘ方ヲ伺ヒ、苟モ外見雑談等ナスベカラズ。

(三) 若シ授業ノ時間ニ後レ参校スルトキハ、遅刻ノ事情ヲ教師ニ述ベ、其允(ゆるし)ヲ得テ席ニ着クベシ。

(四) 書物ノ取扱方ハ、成丈ケ丁寧ニ致シ破損セザル様ニスベシ。書物ヲ開クニ爪ニテ紙ヲ傷メ、又ハ指ニ唾シテ開クコトナカルベシ

(五) 生徒タルモノハ、教師ノ意ヲ奉戴シ指揮ヲ受クベシ。我意我儘ヲ出スベカラズ。

(六) 授業中自己ノ意ヲ述ベント欲スルトキハ、手ヲ上ゲテ是ヲ知ラシメ、教師ノ許可ヲ得テ後ニ言フベシ。

(七) 師友其他凡テ知リタル人ニ逢ヒタランニハ礼儀ヲ尽シテ挨拶スベシ。帽アルトキハ之ヲ脱スベシ。

(八) 途中ニテ遊ビ、無用ノ場処ニ立ツベカラズ。若シ馬及ビ車等ニ逢フコトアラバ、早ク避ケ、馬及ビ車等ノ妨ゲニナラズ、自分モ怪我ナキ様ニスベシ。

 一、生徒罰法
 次ノ罪科ヲ犯ス者アレバ、受持教師罰名ノ条ニ照ラシテ立案シ、衆議ノ上相当罰ニ処スベシ。

  罪科
 (一)書籍、石盤等必要ノ物品ヲ遺忘スルコト。
 (一)教場ニ於テ書籍、器機ヲ取乱スコト。
 (一)授業中談話シ、又ハ猥リニ席ヲ離ルルコト。
 (一)授業時間外、猥リニ教舎ニ入ルコト。
 (一)禁ゼシ所ヘ猥リニ入ルコト。
 (一)校中ヲ奔走シ、又ハ猥リニ高声ヲ発スルコト。
 (一)教場装置ノ器機ヲ取リ扱ヒ破損スルコト。
 (一)校内花卉草木果実等ヲ取リ又ハ瓦礫ヲ擲ツコト。
 (一)喧嘩口論ヲナスコト。
 (一)校舎建物ニ瑕ヲ付ケ、或ハ楽書スルコト。
 (一)教師ノ訓諭ヲ用ヰザルコト。
 (一)授業料ヲ私費シテ納メザルコト。
  備考 罪科の中に盗みのことがないが、当時はなかったのであろう。
  罰名
 (一)一時間ヨリ五時間ノ中、直立。
 (一)遊歩時間(現在の休憩時間)習字。
 (一)遊歩時間 拘留。
 (一)放課時間後 三十分ヨリ一時間拘留。
  一、総テ罰ニ処セシトキハ、其理由ヲ詳記シ該父兄家長ニ報告スベシ。
  一、教員等人員 小学訓導一人 助教十人
  一、教員俸給
    小学訓導一名 年俸百二十六円(月十円五十銭)
 
  一、生徒数 凡三百五十人
 
     歳出入予算
  金 七百十三円六十銭  歳入
   内
    金百四十円二銭八厘           学資禄券利子
    金三十一円八十銭            授業料
    金百一円四十二銭九厘          地方税補助
    金四百四十円三十四銭三厘        学費補助
  金 七百十三円六十銭  歳出
    金百廿六円               教員給料
    金四百六十八円             助教給料
    金卅七円六十銭             諸給料
    金二十円                営繕費
    金三十円                消耗費
    金二十円                備品費
    金五円                 旅費
    金三円五十銭              賞与費
    金三円五十銭              予備費