経蔵は、享保十二年(一七一六)に一切経四千五百巻を輪蔵と共に将軍徳川吉宗公より寄進されたものと伝えられているが、輪蔵の廻転軸受石に享保三年(一八〇三)癸亥年三月等の銘があり、現在の建造物は同年の建築である。
基壇は雨落の布石を廻し、向拝部は二段、土蔵はなお一段布石を高く廻している。正面に一間の向拝を設け、礎石を据え礎盤をおき丸柱を建て、上下に粽をつけている。斗〓は三斗出組で板支輪に雲形の彫刻を施し、化粧〓を用いず漆喰塗としている。身舎とは虹梁で繋いている。内部は鏡天井で、墨絵の竜が描かれている。屋根は寄棟造りである。
身舎正面一間は引分けの塗込戸を建て、内側に堅桟透しの板戸を嵌めている。外部腰は簓子板張りとし、軒桁まで漆喰塗である。内部は正面五間側面六面に柱を建て板壁とし、両側面に一ヶ所宛明窓を設けている。屋根は宝形造りで、露盤宝珠をのせて鉄板平葺である。内部の輪蔵は廻転式の書架で、八角形の緻密な細工が施されている。複雑な斗〓や彫刻を嵌め要所には彩色を施し、総体漆塗で見事なものである。