(1)高尾郷桜田村温泉神社年中行事(抄)

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               『創垂可継』(三社祭式)による
             文化十四年(一八一七) 大関増業編
①年中行事
(月日)(温泉神社)(結社中野内)
一例
正月元日 辰之刻奉神供榊「かみじめ」は世帯主が、大晦日につくり、神棚、井戸、うまや、板倉などに飾った。
奉大幣帛 毎座
御鏡餅  七重并末社毎座
     一重宛「おそなえ」
御饌   七前各高坏(少し前葬儀などがあったときは供えなかった)
神酒瓶子 三対
打鮑 勝栗 昆布 各三方「若水」を汲む
無塩納豆(世帯主か、そのあととり)
例礼糖 土大根初詣
切勝臭切鮭 両魚之内一品ほしがき、みかん、こぶなどを神棚に供える。
 今夕戍之尅神宮寺〓奉膳之事雑煮「切餅」を使用した。
 自今リ七日〓千座置座抜行事また或家では、「餡」などを餅につけて三日間食す家例もあるが、その数は少ない。
二日辰之半尅奉神供元日之式同三ケ日間「茶」を断つ家例もみられる。
前神楽〓始之神事正月中(十四日頃まで)餡はつくらない。
神馬召始之神事
三日同前日之式正月中使用するものは、晦前に作っておく。
神軍兵法始之事、己之刻也
四日同前日之式仕事はじめ、「藁すぐり」「俵あみ」をする家もあった。
神供式同前
土公祭之事飼い馬の「乗り初め」をおこなった家もある。
黄土と洗米を奉る初荷
六日同前日之式
山神祭之事新客
備物(嫁が里にあいさつに行った)
 白ゆふかきたれの事「山入り」
 あられもち餅を細かに切って山の神と烏(からす)の分も供える。
 米
 田須くり「にぼし」少々供える。
 海産「芝っ木」(薪)を、一かゝえ(一束)もって帰る。
右者斧入之男行事
七日今暁寅尅奉神倶世帯主がおこなう。
七種之御粥備進同前之式七草
同尅御秡王璽神倶直会行事人参、ごぼう、いもがら、せり、ほうれん草など、ありあわせの野菜を入れて粥をつくる。
夘日夘杖献進之事
 但し、四種之著物を付て奉る事
洗米奉献并豊奇神ニ散供
十一日夘半刻奉神供并鍬入之行事鍬入り(鍬立て)
備物山入に同じ供えもの
御具足之神之事「山入り」と同じ
 末社鎧(よろい)明神之社前にて奉幣する三鍬ほど耕すまねをする。
 年色の威餅を奉る(実際に耕すこともある)
蒿巾威にハ、麦餅寅夘年也「鎧塚」と呼ばれる小さい塚があったが、今は削平されてしまった。
夘乃花威ニハ白斗餅酉年奉る也
かた志ろ威ニハ、白餅申年奉る也お倉開き。
黄糸威にハ黄餅丑辰未戍乃四年に奉なり
小桜威ニハ薄紅餅己年奉る也
□□威ニハ赤餅己ノ閏年奉ル也
緋糸おどしニハ赤餅己年奉る也
紺糸威ニハ黒餅子年奉る也
 次御具足開之事年により十五日にて有
十三日己之尅御饌供之神事小正月
神供打鮑 昆布 洗米門松をとる
十四日若餅之神供奉る事団子をあげる
米木花白粉奉るとりごや
 将軍へ奉るどんど焼
今夕酉尅清祓之行事(小屋をつくる)
十五日今暁寅刻〓朝夕門松毎饌を奉るお供餅を下げて若餅をつくる。
辰之尅奉御粥之神供亦諸神奉るのでんぼの木で木刀をつくってあげたこともある。
十六日末社神明祭之事成木責め
から粉団粉、神供奉る小豆かゆ
十八日辰之尅御粥之神事亦神宮寺薮入り、(大斉日)
十九日夘尅奉幣帛神酒「肥出し」・「井戸さらい」
御饌七前各高杯十四日のとんぶ団子を入れた小豆かゆをつくる。
如式「十八かゆ」(小豆粥)
自十八日今夕〓祈産之行事末日までにとんぶ(ぼ)団子等を下げる。
二十日恵美寿祭之事「えびすこう」
御飯 魚鳥菜 生魚 神酒
同様之仕立奉平殿都合二膳也(商人(あきんど)のえびすっこ)枡のなかに財布や銭を入れて供える。
二十三日加句土神祭之事銭をまき、子どもに拾わせる。
川菜 供米 奉る
二十五日同神頭付魚、煮しめ等を供える。
ひさこ川菜洗米奉る也しまい正月
二十八日辰之尅奉神供地蔵さま
年始香賀世祭之事
団粉奉る事不動さま
包飯五星二十八宿毎座奉る也
二月朔日辰尅奉供亦行事次郎の一日
神酒 榊厄払い
二日辰之半剋奉神供水餅
祈年祭之行事現在二月十七日
斎戸秔之事豆撒き(節分)
御祭神酒之米造入之事節分の豆を年だけ拾って食べると病気にならない。
尤申の寅午の両日を用る吉例なり。
年穀祭之事豆をとっておいて初雷のとき食べると落雷しない。
御神供子刻奉る
初午末社稲荷祭之神事初午
本殿亦すむしかり・赤飯を奉る。正一位稲荷大明神と五色の紙旗を屋敷内の稲荷神に上げる。
八日奉神供亦赤之餅奉る炊き赤飯(こわめし)
疫神祓之行事スムツカリ(つとっこに入れて供える)
榊散米事始め
社日本殿亦社日祭之事「めかい」・「うどんあげざる」を軒下に前日かける。
二月中に近き戊日を取る也
五穀にハ穀亦諸作の種物を奉る也豆腐を剌して戸口にさす家もある。
御饌神酒榊針供養
十日田神祭之事田の神
米団子を奉るなり次郎まつり
十三日雷神祭之事神だなおろし
辰半尅奉神供種もみ一升、から臼つき、団子を供える。
十九日辰刻奉神供神雷神詣
栗、ひ恵、ごま、むぎ、けし、大豆、小豆、鷹、蘇油、塩十五日、麦こと
 十八日より二十日大祭宗源之神事
 此間に幣御串鬮之事
二十四日末社愛宕祭之事愛宕詣
二十五日管糸社祭之事
二十八日辰尅奉神供
三月朔日辰尅奉神供榊
御祭礼調取始之事
二日蓬草取立事桃の節句(女のせっく)=ひなまつり
三日辰尅奉神供草餅
蓬草餅 御撰 〓 菱餅・つぼ餅供える
桃花神酒 赤鮑 昆布 雛人形飾り
七日地普請始る事も有。其日清祓の行事 あられを供える。
又十四日にも有嫁―里帰りする家もある。
十五日辰刻奉神供改火之行事
 一夜醴 社界散米行事
 赤小豆御饌 御塩婦之行事 首尾鰹 神酒
右御祭礼〓綱却シ之行事
今暁寅刻より祭主入斎志不
出社界禁足慎也
十六日己之刻神供
御馬屋請ノ事、散米之行事
流鏑馬来リ入ル
十七日辰之尅奉神供神、輿洗之事
十八日夘之尅奉神供
神酒〓子 梅漬 茄子漬
十九日毎年今日御幸有之祭式等前紙委し
二十日奉神供
散斎之行事申酉両刻中也
諸忌之諸品を流川之事
四月朔日申尅奉神供天念仏
四日鷹形之御膳盛奉る也(花まつり)
八日重護不死之行事おしゃかさま
己刻芥葉餅奉る事赤飯、餅をつくる
  藤花立之御膳奉る事藤の枝を軒先にさす。
  亦門戸祭之事
十五日此両日麦小麦之初穂を奉る也
十九日婦き、山いも奉る。麦の穂奉る
二十八日上之夘日夘之祭之事
洗米神酒奉る
五月朔日辰半尅奉神供苗を神だなに供える。ただし麦の粉はかけない。
稲之苗献る事大麦を粉にして「こうせん」をつくって食べる。
是ハ田植の終りたる苗壱束取り、根を洗て、是に麦の粉をかけて奉るなり八十八夜 水口まつり
四日菖蒲芥鋒備奉る也
末社亦神宮司迄
五日辰半尅奉神 供神酒
千真喜 柏葉包餅しょうぶの節句(男のせっく)
干魚 筍山いも「かしわもち」を作る
笠立之行事山いも、里いもなどを食べる。
十五日辰半尅 奉神供
十九日於気良 香木梅也 御火焼行事鯉のぼり、武者絵幟、肥出しする。
二十八日御田植之神事「かしわもち」を作る
御神供一夜酒奉る水口まつりをする。
六月朔日辰半尅奉神供むけのついたち
氷室餅虫おくり
日限の賀津良百万遍念仏
十五日辰尅奉神供「うどん」「赤飯」
米王祭之事瓜神供奉る七日、十五日
二十一日寺宿天王祭之事「きうり」を供える。
茄子 青刀豆初物はつねに仏だん等に供える。
三十日申尅奉神供
荒和大祓之行事
申酉刻火焼之神事
身曽喜祓之行事
名越祓之行事
生茅輪束 ワラの包八
麻之葉  芦の葉茅の輪くぐり
串十六  洗米
神酒   塩
七月朔日辰尅奉神供 神酒かまのふた=地獄のかまの蓋があき、仏が出てくる。
小麦の餅  大豆粉
千茅立   宵より備也「たんさんまんじゅう」(小麦まんじゅう)を供える。
六日女ユ祈之事
七日辰尅奉神供七夕
神酒 桃 瓜 茄子里芋の葉露を集めて墨を磨り、七夕の短冊に字をかき飾る。
七夕祭之事赤飯(こわめし)
従是後晴天之日を撰ミ召払之事その他好みの料理をつくる。
十三日荒置和御置退之事盆(十三日迎え盆~十六日送り盆)
十五日中元之奉幣奉神供盆棚をつくる。
神酒 干魚 茄子 青刀豆 塩茄子を賽の目に切って里芋の葉にのせて供える。茄子、胡瓜で作った馬を供える。
十九日奉神供 真句輪瓜 塩
立秋日素戔尊祭之事十六日、薮入り
二十八日神供調進
八月朔日辰尅奉神供九朔(はっさく)(風祭り)
御饌 七前かやのはし
大根 青大豆 生姜 神酒 赤鮑 昆布「里芋」「なんきん」などを煮て供える。
八日花摘御供 調進之事
花時之菓子
十五日末社八幡祭之事金丸八幡参詣
十九日奉神供十五夜、すすき、団子(十五個)、枝豆、芋など供える。
二十八日初納豆神供奉る事
九月朔日辰刻奉神供
九日辰半尅奉神供重陽神事草の刈り上げ
御饌 菊花酒奉る赤飯
生姜 魚榊十日小祭
十三日望月祭之事すゝき、大根、団子(十三個)、柿、栗などを供える。
御饌 栗 柿 里芋 青豆 米団粉 大根
十五・此両日伊勢両宮遥拝神事
十六日洗米榊
十八日定例相撲之会之事十日
十九日御影祭之神事
 赤小豆飯 一夜酒 清酒 稲初穂 田作魚 榊 小鳥 貝 各三方
二十三・加句土神祭之事
二十四日神供神酒
二十五日祭洗米
二十八日辰尅奉神供末社祭之事
神供神 酒魚 から粉不動
二十九日日様諸社諸詞之祭之事
十月朔日亥月にて六陰重之祭之事
辰尅奉神供十日、餅を供える。
十五日奉神供大根の年取り
二十日恵美寿祭之事恵比須講
御撰の高盛 神酒 灯火(百姓のえびすっこ)
魚鳥三菜 生魚 榊供えもの、一月と同じ
 尤、本殿奉る共都合二膳
二十八日同前月
十一月朔日辰之尅奉神供
神酒
青木里日月神祭之事
神供 洗米 神酒 一夜酒 魚
冬至日十一月中冬至祭之事冬至
於気良 茄子加良 菊加良けんちん、とうなす(南瓜)をたでる。
豆加良 香木梅也 火焼之柚子湯をたべる。
行事 神供 神酒きくがら、茄子がらを燃やして、あたる。
榊 魚
七日末社山神祭之事(寒さに負けない)
洗米榊 神酒魚鳥のつゆもの。
八日御火焼神事
神供神酒散米榊
十五日同前月七・五・三
十九日同前月このころ坪餅(はきだめ餅)を搗いたり、油しめをする。
夘之日此月夘之日新掌会之祭事
新穀御饌奉る如式新米を供える。
十二月朔日辰尅奉神供かぴたり(かわぴたり)
河漬餅只し琵琶箱入れて備奉るなり餅を十二個、橋や大地に供える。
臘日猟之獣を取祭る事気の前後ニて近き辰之日用る也前後日数なるハ退て前之辰日なり餡をなめてから橋をわたる
得物獣物を社外鳥居不備て奉る也 地神を合祭る 尤五穀の里を防く象旗二本を以て祭る 虎と猫とを画也此祭今ハ上下なきなり(水難にあわない)
是ハ只鳥居下旗前に備る斗ニて直ニ社地遠く退て捨る也
八日疫神防之祭事厄神(やくじん)まつり
わらつと洗米 魚「ねぎ」と「豆腐」を串にさし、戸口にさす。
此月中正月事始之行事二十日(すゝはき)
二十三日御煤払之神事 塩酒之行すゝだんご
二十八日諸祓之行事「こんにゃく」を食べる。
一切散穢之事 火焼之事餅つき
塩湯之行事
わらつと 八榊 料物包木
散米 神酒 柏葉
二十九日御松飾之神事門松
大晦日年忌之神事(松、竹)をたてる。
年越之神事おみき、年越そば
神供神酒 魚 海草角又
 
年中毎日遥拝神供奉る事毎日、神だな、仏だんを拝む。
年中六度甲子祭之事
 黒豆の神供 清水奉る
 神酒 魚
年中六度庚申祭之事
 春ハ東方夏ハ南秋ハ西方冬ハ北方恵方参り
 此方に向て神供神酒奉る行事
一年神祭
神供松竹榊ところ
神酒白ゆふかちくり
魚田作海産かや
海草角又吹ろしみかん
ほたハウ類かきのし
散米こんぶ
裏白
ゆつり葉
行事奉る

(注)民間の年中行事は、中野内老人クラブの方々(益子武・川上義正・関谷サク・菊池サダ各氏)の御協力による聴取調査に基づくものである。これは集落内の一例である。