①温泉神社祭礼祭式(三月十九日)(抄)

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桜田村温泉神社の御祭礼は三月十九日であった。神事は古格によると厳(おごそ)かに営まれていた。『創垂可継』(三社礼式)によると、祭礼日の早暁湯立祈祷の行事の後に、社人及び氏子・産子など大小男女によって鋤・鍬・鎌などで田畑を耕したり、田植などを形容する戯れ舞がみられたという。

温泉神社祭礼祭式

 寅の刻に、次の神供を奉った。
  御鏡七重 高杯紙敷亦摂社末社
  神白酒清酒なり 黒酒湯酒也
  瓶子三方    壱壺
 神饌は次図の通りである。



  御神供所に、社家が覆面にて盛り調い置く。
 次に本殿で、大宮司による神事が営まれる。神楽殿では神楽が奏せられ、巫女(みこ)が舞う姿もみられた。やがて神輿(みこし)が繰り出される。
   行列之事(こと)
 先 一榊
      猿田彦
 次 前抜
 次 太鼓
 次 獅子
 次 神馬
 次 御鋒
 次 御幡 四神
 次 御弓
 次 御鋒
 次 御楽男 笙亦横笛
 次 武者
 次 大麻  社家一人
 次 随身  社人二人
 次 散米  社家一人
 次 幣帛  同 一人
 次 祝詞  同 一人
 次 神鏡  同 一人
 次 御宝釼 同 二人
 次 巫女
 次 大宮司 衣冠又束帯
   神輿
 次 大宮司(当主) 冠束帯
 次 嫡子(当主)  相詰無之時ハ神輿ニ供奉ス
 次ニ神宮寺 前当
 次 社番
(注) 〔行幸順路〕桜門前石階―鳥居―馬場―神橋―下の神橋―馬場坂―馬場―桟敷前―御仮殿(入御)

御仮殿前の神事が営まれる。神楽男が神楽を奏し、舞二座あり。流鏑馬(やぶさめ)(的一か処)―二度目流鏑馬(的三か処)―獅子舞―三度目の流鏑馬(的一ツ也)―二度目の獅子舞と続く。




温泉神社の流鏑馬


高雄郷「大宮」影向石

  こうして、御仮殿前の神事が終ると、神輿は還御する。
  毎歳九月十九日の御影祭式の神供は左の通りである。
  本殿で神事が営まれた後、神宮寺参詣、奏神楽散米行事、玉串行事、十八神祭行事等がある。なお氏子産子による千度角力(相撲)が行われる。『千度』は俗に『千』と言う。(現在はおこなわれていない)