本法の大要
1 市町村は公法人であるということ及び市町村は地域団体であることを明らかにした。
2 新たに市町村公民たる観念を認めて、
(1)帝国臣民で公権を有する満二十五歳以上の男子が一戸を構え、治産の禁を受けず、且つ二年以来一市町村の住民となり、
(2)その市町村の負担を分任し、
(3)その市町村において地租を納め、又は直接国税年額二円以上を納めるときは、その市町村の公民たるものとし、市町村公民のみが市町村の選挙に参与し、市町村の名誉職の担任する義務を負うこととした。
(2)その市町村の負担を分任し、
(3)その市町村において地租を納め、又は直接国税年額二円以上を納めるときは、その市町村の公民たるものとし、市町村公民のみが市町村の選挙に参与し、市町村の名誉職の担任する義務を負うこととした。
3 市町村にいわゆる自治立法権を認めた。
4 市町村の機関は、これを意思機関と理事機関の二種に分別した。
5 意思機関は市町村会であるが、その市町村会を構成する市町村会議員の選挙権及び被選挙権は、市町村公民にこれを附与(例外として公民でないが多額の市町村税を納税する者にも附与)した。選挙の方法としては、市は三級、町村は二級の等級選挙制を認めた。また市町村会議員の任期は六年とし、三年毎に各級においてその半数ずつを選挙することとした。市町村会の職務権限は、議決をなす権、選挙を行う権、監視をなす権、意見書提出の権、訴願裁決の権などであるが、とりわけ議決権は市町村の歳入歳出予算、市町村税及び夫役現品の賦課徴収などをはじめ、市町村に関する一切の事件に及ぶものとした。
6 理事機関は、市と町村とにおいて相違し、執行機関には、市にあっては合議制である市参事会、町村にあっては独任制の町村長をこれに当てた。市参事会は、市長、助役及び名誉職参事会員をもって組織し、市長は内務大臣が市会をして候補者三名を推薦させた中から、上奏裁可を請うのであり、名誉職参事会員は市会において、市民の中から年齢三十歳以上で市会議員選挙権を有する者から選挙して、府県知事の認可を受けることを要した。町村長は、町村会において選挙するのであるが、その被選挙資格は、町村公民で年齢三十歳以上のもので、選挙権を有することを要件とした。市長の任期は六年、名誉職参事会員及び町村の任期は四年とした。以上の執行機関の補助機関として必要な吏員を置き、まだ市町村の会計事務機関として別に収入役を置いた。
7 市町村の権能として認められた主なるものは、組織権、自治立法権、自治行政権、自治財政権である。
(1)組織権とは、市制町村制に直接規定した以外の事項につき、市町村の構成に関する種々の作用をなす権である。
(2)自治立法権とは、市町村自ら住民の権利義務及び市町村の事務に関して法規を定めるの権であり、
(3)自治行政権とは、市町村の共同事務を処理し、及至は委任を受けて国又は他の団体等の事務を処理するの権であり、
(4)自治財政権とは、自ら財産を所有し之を管理し、一定の収入を得、かつ支出を為する権である。
(2)自治立法権とは、市町村自ら住民の権利義務及び市町村の事務に関して法規を定めるの権であり、
(3)自治行政権とは、市町村の共同事務を処理し、及至は委任を受けて国又は他の団体等の事務を処理するの権であり、
(4)自治財政権とは、自ら財産を所有し之を管理し、一定の収入を得、かつ支出を為する権である。
8 市町村の行政は、国家が監督するのであるが、その監督官庁は、市にあっては第一次が府県知事、第二次が内務大臣であるが、町村にあっては、第一次が郡長、第二次が府県知事、第三次が内務大臣になっており、その監督方法は事後監督の外、特に必要な問題については事業監督の権を認めて、市町村行政に過誤なからしめることを期した。即ち、事前監督の方法としての主なるものとしては、市町村条例の設定及び改正、租税の賦課、市町村債の募集その他重要なる財政行為及び主要なる市町村吏員の選任等に関しては、それぞれ監督官庁の認可を要することとした。また事後の矯正的監督としては、市町村の違法越権又は不当となる議決に対する矯正権、代議決権、市町村会の解散権、市町村吏員の懲戒権などがその主なるものとして認められたことである。
9 市町村に関する特別組織として、市町村間の一部にして特に財産を所有し、又は営造物を設け、その一部限りで費用を負担するものに対し、特別の組織を認め、また数町村の事務を共同処理するため、数町村が町村組合を設けることができるものとした。
〈栃木県市町村誌〉
明治二十二年より、昭和二十年の太平洋戦争終結までの間に、我が国の市町村制度は、再三改正されたが本法が基となって運営されていくので、特に此処に掲げた。