一 議会の状況

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 明治二十二年(一八八九)町村制が公布されて、町村が始めて地方自治団体として誕生したのである。公選による議会議員が選出されて、住民の意思機関としての議会が制定された。議会の議長は必ず町村長がなることになっていた。
 旧川西町役場の文書の中に左の様な議長(町長)よりの議会開会告知文書控がある。
 左之件ニ付来ル二十日町会相開候条
 仝日午前第十時大字黒羽向町仮議場へ御参集相成度此段及告知候也
   明治二十五年五月十六日
       川西町々会議長益子元
   各議員姓名宛(各通)
  一、会議細則第二条ニヨリ議員席次ヲ定ムルコト
  二、当町役場敷地ノ一部分貸与ノ件
  三、会議細則改正ノ件
  四、植竹三右衛門道路使用願ノ件
 また、大正十一年(一九二二)十月二十八日、川西町立図書館設立を議決したときの町会会議録を原文のまゝ掲載し、当時の議会のようすと世代感・思想信条を偲ぶよすがとする。
 川西町大正十一年第七回町会議録
 十月二十八日
 本町会ハ出席議員定員ノ半数以上ノ出席ヲ認メ之ヲ開ク
 出席議員左ノ如シ
 一番 磯嘉伊助 二番 菊池三之助 三番臼井兼次郎 四番 植竹熊次郎 五番 加藤政吉 七番 小滝岩次郎 八番 松本兼太郎 九番 猪股槙之助 十番 頼高熊三 十一番 菊池政三郎 十三番飯島元太郎 十四番 磯良節
 欠席議員左ノ如シ
 六番 和久友藏 十二番 柳哲吉 十六番 斎藤亥之助
 本町会ニ於テ受ケタル議案左ノ如シ
 第一号 大正十一年度下半期県税戸数割賦課ノ件
 第二号 大正十一年度町歳入出追加予算議定ノ件
     図書館設立ノ件附
 第三号 寒井区長辞任ニ付後任者選挙ノ件
 第四号 会議録署名員選挙ノ件         以上
 午前九時三十分開議
町長 議長席ニツキ開会ニ先チ出席議員及欠席議員ノ報告ヲ為シ開会ヲ宣ス

本町会議案ト致シマシテハ既ニ告知致シマシタル通リ第一号案ヨリ第四号案デアリマス〈中略〉第一号案ヲ後へ廻シ第二号第三号案ヲ先キニ議シタイト思ヒマスガ如何デスカ。御異議ガアリマセンカ

   異議ナシ々々ト叫ブ
議長 御異議ガナイト認メマスカラ 第二号案ヨリ御諮リ致シマス。   本案ハ町歳入出追加予算デアリマス、予テ御承知ノ通リ三十日は学制頒布五十年ニ相当致シマスルヲ以テ、何カ教育ニ関シタル事業ヲ設ケテ記念シタイト思ヒ、種々考案シタル結果本町ニ図書館ヲ設ケ学校教育ト相俟ツテ社会教育上ノ効果ヲ得タイ考ニヨリ、茲ニ図書館設立費ト、記念当日ニ一般生徒ニ菓子ヲ給与シタイ為ニ、本追加予算等ヲ提出シタルノデアリマス。尚図書館設立ニツイテハ 之レ〓其筋ヨリ度々督促ヲ受ケテ居リマシタガ、経費ノ関係モアリマスカラ、今日〓等閑ニ附シテ居リマシタガ、今回教育発布五十年ニ相当シ何カ記念ニシタイト思ヒ 爰ニ図書館設立ヲ計画シタルノデアリマス、何卒御賛成セラレ議決アランコトヲ希望シマス

十四番 本案ハ至極結構ナルコトト思ヒマスガ此ノ経費ハ何レヨリ支出スルヤ、ト問フ。

議長 追加予算ノ歳入ハ戸数割ニ賦課セズ、県税雑種税賦課税が既定予算ヨリ、増加ノ見込ミアルヲ以テ歳入ニ充当シタルノデアリマス。

十四番 議長説明デ了解シマシタ 而シ設立ノ上ハ、購入スベキ本ノ撰択ハ充分注意ヲ払ヒ、小説ハ除外スルコトニセント主張ス。

十一番 只今十四番ノ意見ニハ、小説ハ除外セントノ主張デアリマスガ、之モ時勢ノ文芸トモ云フコトデアリマスレバ、是非加ヘルコトニセン、ト主張ス

十四番 本員ノ考ヘニハ、図書館ハ修身、道徳ニ重キヲ置キ、娯楽的ノモノハ避ケタイノデアリマス。

九番 小説ニシテモ、即チ風俗壊乱ニ傾クト計リハ言ハレマセン。即チ勧善懲悪ヲ含ミ居ルモノデアリマスレバ、其撰択宣シキヲ得マスレバ敢テ差支ヘハナカラウト考ヘマス。就キマシテハ此ノ図書館ニ付、委員会ヲ開キ、充分撰択ヲ為スコトニ致シタシ、ト主張ス。

議長 本案ハ大分御論モ尽キ原案ニ異議ガナイト認メマシタカラ、読会省略シテ可決確定議ト致シマス

 次に議会に提案された議題について資料そのままを記して、当時の一端をうかがう事にする。
 明治二十五年(一八九二)三月廿六日提出議按及議題ノ順序
一、川西町々会議員就職交替法按
二、川西町々会議員退任者抽籤ノ事
三、川西町大字余瀬境界変更諮問按
四、地価割条例按
五、川西高等小学校設置ノ件開申按
六、旅費規則改正按
七、町税上納延期ノ件
八、地方税戸数割等級降等願数件
九、二十五年度川西町税賦課徴収規則按
十、二十五年度川西町歳入預算按
十一、二十五年度川西町歳出預算按
十二、二十四年度歳出預算中費目流用ノ件
十三、役場敷地の接続地処分方協議
十四、地方税戸数割課額等差按
十五、授業料ノ額ヲ定メ諮問スルコト
十六、教員旅費ヲ定ムルコト
 右の議会会議録を得る事ができなかった為詳細な事はわからない。