3 農山村経済更生運動

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 農山村経済更生運動は俗に自力更生運動といわれ、昭和五、六、七年(一九三〇~三二)の農村不況の深刻化に対応して、救農議会(昭和七年(一九三二)八月二十三日召集)と呼ばれる第六十三臨時議会において打ち出された救農対策の一つである。本県では政府の本針に基づき、昭和七年(一九三二)栃木県地方更生委員会、同農山村計画委員会を設置し、農山村経済更生計画の樹立実行を推進していった。
整備計画樹立地区並町村名
地区名郡市町村名農山漁村名指定年度備考
東北山那須郡芦野町農山村昭和十一年度昭和十三年度分村指定町村
昭和十四年度特別助成町村
〃  伊王野村〃 十四年度
岳地区〃  西郷村農村〃 八年度昭和十一年度特別助成村
昭和十三年度分村指定村
〃  須賀村〃 九年度
〃  黒羽町〃 九年度

 本町では、両郷村、須賀川村、黒羽町の三地区が整備計画の指定をうけた。両郷村の場合は、特別助成計画、分村計画の二計画地区計画書は、美濃紙の和紙を用い五十四枚の大冊である。
(河原公民館長高倉一英氏所蔵)

計画書の目次は次のとおりである。
第一、経済更生計画ノ要旨…………………………………………一頁
第二、村ノ概況………………………………………………………三頁
(一)共同施設(二)個人施設ニシテ国又ハ道府県ノ補助ヲ受ケタル施設

(一)位置及地勢其他村情大観(二)戸口(三)土地面積(四)主ナル生産物(五)村民ノ収支及負債(六)部落別経済大観(七)農林漁家ノ負債及貯金調査(八)経済更生計画実行組織(九)基本調査ノ結果ニ依ル本村ノ缺陷長所

第三 村民ノ収支及負債並ニ更生ノ目標…一七頁
 (一)収支目標(二)生産目標(三)其他ノ目標
第四 経済更生計画実行ニ要スル施設項目…二七頁
(一)米(水稲)改良増殖計画(二)生産改良増殖計画(三)小麦改良増殖計画(四)煙草改良増産計画(五)柿ノ改良増殖計画(六)畜産改良増殖計画(七)副業奨励計画(八)林業奨励計画(九)農業経営改善計画(一〇)自家用醤油醸造奨励計画(一一)自給肥料増産計画(一二)農作物病虫害防除計画(一三)産業組合拡充計画(一四)産業組合利用事業計画(一五)部落公会堂兼農繁託児所建設計画(一六)指導團體ノ充實計画(一七)共同収益山林計画(一八)納税共同施設計画(一九)負債整理計画(二〇)時報機(サイレン)設置計画(二一)農民道場設置計画(二二)耕地関係施設計画

第五 経済更生計画ニ要スル経費一覧表…四八頁
   一未施設計画事項(新設ノモノ)
   二既施設計画事項(計画樹立後セルモノ)
   三計画樹立前ノ施設ニシテ現存ノモノ
(一)共同施設(二)個人施設ニシテ国又ハ道府県ノ補助ヲ受ケタル施設

 農林業の凡べてついて計画され、社会教育中堅青年の育成、生活改善等まで計画に盛られている。正に町村の総合開発による、立て直しである。既に此の計画の中には、戦後実施された農村振興計画、構造改善計画、等々現在の農政に取りあげられている問題の、萌芽が見られる。この計画で取りあげられたサイレン、集荷所、貯水池、毎戸のように造られた灰小屋等は、現在でもなお役立っている。集荷所は老朽化したため山村振興特別事業として新に集会所として新築された昭和五十三年(一九七八)昭和五十四年(一九七九)にかけて実施された。米麦、野菜集荷を目的として、当時は造られたのであったが、集会所と米麦の集荷に利用されたが、その後政府の方針により米麦検査所が、纏められたので専ら集会所に利用され、これが公民館となったのである。

集荷所


貯水池


灰小屋

 自家用醤油醸造は、農会技師等の活躍により、殆との農家に普及し戦後昭和三十五、六(一九六〇~六一)年頃まで続けられた。