○雅致ある線掘り

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 線掘りを得意としたかなめ焼の作家に愛知県からきた岡村喜平治(一鳳)がいた。一鳳の代表作に大正八年(一九一九)に皇室に献上した菊の浮き彫りの花瓶(高さ二十糎)がある。かなめ焼作品中の圧巻であろう。なお旧株主に配布した時の記念の花瓶には次の文が刻んである。
「陶器製造ヲ創メ可奈見焼と銘名ス。其の発展ニ一致奮斗スルコト拾有五年、茲ニ黒羽陶器会社成立ス。因テ献納品ニ模シ、此ノ花瓶ヲ製シテ旧株主拾三名ニ頒ツ、大正巳未年 八年(一九一九)八月」

 次に大正四年(一九一五)同社給料帳によると、製造所に勤めていた者は、前述の岡村喜平治のほか金沢新一・渡辺仁一・同猟之助・本田仁之助・同三郎・小野寺タツ・萩原ハツ・石川三芳などである。なおこれらのうち月給者は拾五円から八円。日給者は七拾銭から弐拾五銭ほどであった。