一 郵便

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 江戸時代、書状の送達は飛脚によって行なわれていた。維新後明治元年(一八六八)駅逓司が設けられ、明治三年(一八七〇)に郵便規則がだされたが、基本的には飛脚制度と同じであった。
 明治四年(一八七一)に駅逓頭、前島密によって、新式郵便制度を創設、東京、京都、大阪に書状集箱を設け、賃銀切手を貼付させ、書状を送達する方法が採用された。その後明治五年(一八七二)郵便規則が公布され、全国の主要道路に郵便を取扱う郵便御用取扱所が設置されることとなり、郡内では旧奥州街道筋では佐久山、下田原、鍋掛、越堀、芦野、関街道筋では黒羽、烏山におかれることとなった。黒羽町においては黒羽向町二番地、上河岸に四等郵便御用取扱所が設置され、局長に柳幸之助が任命された。
 当時の郵便料金は全国均一でなく、距離によって異っていた。また配達人の賃金もそれぞれの局によって取決めるようになっていた。
  書状 五匁まで 東京―大阪 十五銭
          東京―京都 十四銭
          東京―静岡  五銭

 明治六年(一六七三)郵便料金は全国均一となり、距離による料金制は廃止となった。
  書状
  目方 二匁まで  全国 二銭
           市内 一銭
  葉書       市外 一銭
           市内 五厘
  郵便局ナキ村   割増金一銭

 明治十年(一八七七)
  書状  二匁迄     二銭
      二匁以上四匁迄 四銭
      (二匁増スゴト二銭増)
  葉書       市外 一銭
           市内 五厘
  局ナキ村   割増金  一銭

 黒羽町の郵便局並びに取扱役者
               (明治十四(一八八一)年度)
    黒羽局 四等 柳幸之助
        七等 福田霞山
         須佐木局 四等 戸村嘉右衛門
         河原局  四等 鈴木嘉茂右衛門
         寒井局  四等 蓮実久治右衛門
 と黒羽地区内には四局があった。
 各郵便局集配区域 明治十六(一八八三)年度
           △印為替局
           ○印郵便箱設置
  △黒羽郵便局 ○北野上村○佐良土村
         ○湯津上村○片田村
         ○前田村 ○蜂巣村
         ○北金丸村○狭原村
         ○堀之内村
   寒井郵便局 ○稲沢村 ○檜木沢村
   須佐木郵便局○須賀川村○雲岩寺村
          川上村
   河原郵便局 ○中ノ内村○大久保村
         ○川田村 ○寺宿村
          大輪村
 黒羽局の集配区域には湯津上村の一部と大田原市の金田地区の一部が含まれていた。
 明治十三年(一八八〇)黒羽局郵便物逓運規則
 脚夫は毎日午前六時半に大田原局を出発郵便物を黒羽局に逓送、帰途黒羽局の郵便物を大田原局に送達する。
 脚夫は偶数日午前六時半に黒羽局を出発、郵便物を小川局及び馬頭局に逓送、帰途馬頭小川局の郵便物を黒羽局に送達する。但し二、四の日は馬頭局にて喜連川局、烏山局、および茨城県の大子局、大岩局からの信書と交換する。
  逓送時間
 陸羽道  二等速度 一時間 二里
 枝線   三等速度 一時間 一里半
 信書受取渡時間   壱ヶ所 十分の割
 行李用開閉時間   壱ヶ所 二十分の割
 渡船時間      自十分至二十分
 明治十六年(一八八三)になると黒羽町では須佐木、河原、寒井に郵便局が設置されており、須佐木は黒羽局に、鍋掛局は寒井局に、芦野局は河原局に脚夫を仕出し、信書の逓送や交換を行なった。当時の郵便逓送は陸羽道を幹線として営なまれていたので、幹線から離れた局(馬頭・黒羽・寒井・河原等)は幹線の局(喜連川・大田原・鍋掛・芦野等)に回送し、そこから各地に逓送されるようになっていた。
 陸羽道の郵便物の逓送は身元確実で強健なる者と契約し、それによって逓送を行なっていたが、明治十八年(一八八五)一月より、宇都宮の運送馬車業者手塚五郎平が請負逓送することとなった。その命令書によると、左のようになっている。
 ①一日に上下両便 二回 逓送する
  東京発午前十一時十五分
     午後七時三〇分
  白河発午後五時二十九分
     午前四時二十分
 ②逓送速度は一時間に二里半
  開閉局(六局)取扱時間 毎局二十五分以内
  立寄局(二十局)    毎局十分以内
  馬匹継替(十八箇所)  各所十分以内
  東京・白河間  総計  二十九時十三分

下野国郵便線路之図

 明治十八年(一八八五)より、東京・白河からそれぞれ一頭あるいは二頭曳の馬車が出発し、郵便物の逓送が行なわれるようになったが、これらの郵便馬車も明治二十年(一八八七)に日本鉄道が上野・白河間に開通するようになると、郵便輸送の方法は鉄道へとかわった。
 黒羽方面の郵便物は大田原局を通して、西那須野駅に運ばれ、各地に送達されるようになった。
持戻便
線路名局名往便復便往便復便結束方法
差立時刻到着時刻差立時刻到着時刻
大田原大田原後二、三一後六、一三東京青森間下一及上二号便着取扱済次第差立
黒羽間黒羽後四、一二後四、三三(三六、五、一一改正)
黒羽黒羽後四、二五後九、四五大田原黒羽間持戻便着取扱済次第差立
伊王野間伊王野後六、五五後七、一五(三五、七、一開線)

 東野鉄道の開通は大正七年(一九一八)であったが郵便物が東野を利用して輸送されるようになってきたのは大正十一年(一九二二)からである。
  黒羽郵便局沿革
 明治五(一八七二)年七月一日
      黒羽向町二番地に
      黒羽郵便御用取扱所開設
 〃〃十三年二月十二日
      為替事務取扱開始
 〃〃十八年五月一日
      貯金事務取扱開始
 〃〃十九年三月二十五日
      黒羽郵便局と改称
 〃〃二十一(一八八八)年一月二十日
      外国為替取扱開始
 〃〃二十六年七月一日
      小包取扱い開始
 〃〃三十一年五月一日
      黒羽向町三三番地に新築移転
 〃〃三十三年三月十六日
      電信業務開始
 〃〃四十一(一九〇八)年十二月十八日
      電話通話、交換業務開始
 大正二(一九一三)年二月二日
      黒羽向町二番地に新築移転
 大正五年十月一日
      簡易保険業務取扱い開始
 大正五年十月一日
      簡易保険業務取扱い開始
 大正十五(一九二六)年十月一日
      郵便年金業務取扱い開始
 昭和十三(一九三八)年四月
      湯津上村全域佐良土局へ移管
 昭和三十五年十二月十八日
      現在地(黒羽向町三八番地ノ二)に国費新築落成移転
 昭和四十三(一九六八)年八月七日
      電話事務大田原電報電話局に移管
 歴代局長
 明治五(一八七二)年七月一日       柳孝之助
 〃 三十(一八九七)年十二月二十八日   須藤忠蔵
 大正四(一九一五)年八月三十一日     斎藤亥之助
 〃 六年十二月十九日     菊池三之助
 昭和二十四(一九四九)年九月三十日    菊池達郎
 〃 四十五年八月十五日    藤田萬之助
 〃 五十一(一九七六)年七月十五日    奥沢三春
 業務概要   (昭和三十四年度)
一、郵便
             普通     書留
 ① 通常郵便 引受  三四〇、五四五   六、一三〇
        配達  五〇三、三三五   八、八三六
   小包郵便 引受    二、八〇四     五三〇
        配達    七、二二八   二、一六八
   年賀郵便 引受  一一〇、一六一
        配達   九五、三四六
 ② 通信施設 区内無配局  一
        切手売さばき所十七
        郵便差出箱  十九
 ③ 集配施設 取集 二度地 一区
           一度地 五区
        配達 二度地 二区
           一度地 五区
二、郵便貯金
 ①貯金    預入  二五、二五二口 五五、四九九、七三二円
        払戻  七、二六七口 五一、一四〇、六七九
 ②振替   受入   三、三九二  二二、五九三、九一二
       払出     三二八   二、〇三七、八三〇
 ③為替   受入     六四二   六、九七四、七九九
       外国為替払出 外 三      二一、五二二
 ④年金恩給 払出   一、六七八  一六、八六六、九三九
三、現金取扱状況  受入   一三六、一一〇、三八〇円
          払出   一三六、三四六、九三〇
四、簡易保険、郵便年金
 ①保険月掛件数五六二五  保険料     保険料
 ①保険月掛五、六二五 一、五四二、一四〇 二五〇、二九三、六一三円
   年掛  七二    一五、八二二  二八八、〇〇〇
              掛金      年金額
 ②年金   五九   三三四、九一九  九〇四、一二〇
五、電信電話
 ①電信    発信    五、四九三
        着信    六、八〇九
        中継信     四十一
 ②電話
     加入電話 単独    二四三  (二七四)
          二共同    二四   (五五)
          三以上共同  一一   (一一)
          構内電話局線  五    (六)
             計   二八三 (三四六)
          ( )内は新局舎移転開通時
     施設   加入者台   三(四)
          市外台    二(三)
          市外電話回線 一二
     電話市外   発信    八五、七七五度
     通話度数   着信    八一、九二八
            中継信   二九、九一九
     放送     ラジオ 一、八三五 テレビ 二四三
郵便物取扱数
  昭和四十五年度
普通郵便 引受 三二五八〇〇    配達 五四六八四〇
書留郵便 引受   九二〇七    配達  一四六八六
速達郵便 引受   三九六〇    配達   五七六〇
書留小包 引受    四三八    配達   一八五一
年賀郵便 引受 一四九一四九    配達 一四〇七四四
  昭和五十年度
普通郵便 引受 四三五八〇〇    配達 六七九四〇〇
書留郵便 引受   九八二二    配達  一八三二一
速達郵便 引受   四四〇六    配達   八三五八
普通小包 引受   二五五四    配達  一四八七八
書留小包 引受    二一七    配達   一四四九
年始郵便 引受 二一〇六九三    配達 二〇七九九四
  昭和五十五年度業務の概要
普通郵便 引受 一八七二四五    配達 三〇八七九〇
小包郵便 引受   一三九七    配達   四〇一〇
貯金 預金 件数 一二二七二
      金額 七二〇九八五四円
払もどし 件数 五〇七六
      金額 六七七〇七九四円
保険契約受持状況 受持件数 二六一七
         保険料  一一一六六四円
         保険金  一七四九〇一八四円
保険金支払状況  支払件数 二七二
         保険金 七三一〇七四円
 須佐木郵便局沿革
 明治十三(一八八〇)年十一月二日
    須佐木六八番地に普通郵便取扱所として開局
 〃 三十二(一八九九)年二月十六日
    為替事務取扱開始
 〃 三十二年三月一日
    貯金事務取扱開始
 〃  三十三年七月一日
    小包取扱開始
 〃 四十四(一九一一)年十二月六日
    局舎移転 須佐木三七番地
 大正五(一九一六)年十月一日
    簡易保険事務取扱開始
 昭和七(一九三二)年十二月二十九日
    局舎移転 須佐木九九の二番地
 〃 八年三月十六日
    電話交換事務取扱開始
 〃 九年十一月一日
    電報事務取扱開始
 〃 四十三年九月三十日
   局舎移転 須佐木二一一の二番地
〃 五十一年十月十三日
   電話交換事務取扱廃止(自動改式による)
〃 五十四年十月十二日
   為替貯金業務オンラインサービス開始
〃 五十五年十月三十一日
須賀川局電報配達業務廃止に伴い、須賀川全域及大山田の一部が電報配達受持区域となる。

 歴代局長
明治十三(一八八〇)年十一月二日 戸村嘉衛門
〃 二十年八月二十二日      戸村銀次郎
〃 四十四年十二月五日      佐藤亀次郎
大正十一(一九二二)年五月十一日 佐藤玄機
昭和二(一九三七)年九月十六日  佐藤賀納
〃 三十三年八月十二日      金沢農夫男
〃 四十二年六月三十日      大森利朗
〃 五十四年七月二日       須藤定之助
昭和四十二年度業務概要
普通郵便 引受 一七六一八一通  配達 二七一一九五通
書留郵便 引受   二三五二通  配達   四一四九通
小包郵便 引受   二一七七個  配達   四三二二個
電報   発信    三〇六通  配達    九六二通
貯金   預入 九〇六一三三一〇円
     払出 七七五一四二二六円
保険   保険料 一七五二〇六一五円
     保険金支払 一〇四四九三七二円
電話加入台数 一四一台
テレビ受信(昭四十三・十現)
普通(白黒テレビ)七三六台
カラーテレビ     二〇台
昭和五十五年度業務の概要
普通郵便     引受   一八七、二四五通
         配達   三〇八、七九〇通
小包郵便     引受      一三九七個
         配達      四〇一〇個
貯金     預金件数    一二、二七二件
         金額   七二〇九八五千円
       払もどし      五〇七六件
         金額  六七七、〇七九千円
保険契約受持状況
       受持件数      二六一七件
        保険料    一一一六六千円
        保険料  一七四九〇一八千円
保険金支払状況
       支払件数       二七二件
両郷郵便局
昭和八(一九三三)年九月一日 黒羽町中野内六二九番地に両郷郵便取扱所として開所
         郵便、貯金、小為替業務取扱開始
昭和十年二月十六日両郷郵便局(集配局)となる
         為替、保険、年金業務取扱開始
昭和十三年九月一日電信、電話業務取扱開始
昭和十四年十二月六日電話交換業務取扱開始
昭和三十六年九月一日郵便規則八五条適用地指定
昭和五十二年二月八日電話交換業務取扱廃止
昭和五十六年九月一日新郵便年金取扱開始
   郵便集配区
一区 二度地 大谷、中山、八津、河原
   一度地 青木、桜田上、大塚、大戸、薄沢、川田、大輪、久野又下
二区     桜田下、久野又上、大久保、木佐美、寺宿、鍛冶内、富屋、富貴田、横森、横道、両郷

歴代局長
昭和八(一九三三)年九月一日         藤田忠弥
昭和二十七年八月二十一日     藤田実
須賀川郵便局
昭和十五(一九四〇)年一月十六日 須賀川一八四二番地に
須賀川郵便局取扱所として開設
 取扱業務 郵便、郵便貯金、簡易保険、年金
     所長    須藤正年
昭和十五年十二月一日  須賀川郵便局と改称
昭和十八年六月一日   通話事務、電報事務、電報配達開始
昭和二十三年三月三十一日 電話交換事務開始
昭和四十五年三月一日   須賀川一八四三番地に移転
昭和五十一年十月十三日  交換業務廃止
昭和五十五年十月一日   電報配達事務廃止
歴代局長
昭和十五年一月十六日     須藤正年
昭和二十七年七月一日     須藤義次
黒羽前田郵便局
昭和十五(一九四〇)年十二月二十六日
  前田一九五番地に三等郵便局として開局
  郵便引受事務取扱
  電話通話事務取扱
  為替貯金事務取扱
  簡易保険事務取扱
昭和十六年二月無集配特定郵便局と改称
〃 三十一年十一月一日
  私文電報事務取扱
 歴代局長
昭和十五年十二月二十六日  新江敏雄
昭和四十六年八月十四日   新江彰
寒井簡易郵便局
昭和三十八(一九六三)年六月一日 黒羽町寒井一〇九九番地に開設
代表者団体 黒羽町長 戸村大蔵
昭和四十七年八月十六日個人受託契約に変更
            受託者        斎藤みち子
委託業務 定額貯金振替
川上簡易郵便局
昭和三十九年七月一日 黒羽町大字川上一五二ノ一番地に簡易郵便局を開局
郵便、貯金、為替、振替、国民年金支払、簡易生命保険、郵便年金の業務取扱開始
代表者並びに事務取扱者
昭和三十九年七月一日 代表者(団体)黒羽町長 戸村大蔵
           事務取扱者       佐藤ナカ
昭和四十三年六月十九日代表者黒羽町長     大町里由
昭和四十七年三月十六日 個人受託契約に変更
            事務取扱者      佐藤ナカ
黒羽北滝簡易郵便局
昭和五十二(一九七七)年十二月一日
  黒羽町北滝一九九番地に開設
  簡易郵便局取扱事務委託契約
           受託者         津田悦子