(一) 警察

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 廃藩置県後の明治四年十一月(一八七一)太政官達しをもって県治条例が発布され同条例によって地方官庁の官制がはじめて整い県庁の事務は庶務、聴訟、租税、出納の各課において処理することになった。
 聴訟課の事務は「県内ノ訴訟ヲ審聴シ其情ヲ尽シ長官ニ具申シ、及県内ヲ監視シ罪人ヲ処置シ捕亡ノ事ヲ掌ル」と定められ県治事務章程により「地方警邏ノ規則ヲ定メ或ハコレヲ変更スル事」犯罪ノモノヲ逮捕スルコト」と具体的に聴訟課における警察事務が規定された。当時は裁判所の設置はなく裁判検察監獄の各事務とも県庁に於て処理したものでありこの文章にあるように聴訟課が取扱った。
 明治五年(一八七二)太政官第一四六号公布によって、各県は大区と小区に区分することが示達された。本県はこれにより、宇都宮県は明治五年五月三日、に栃木県は明治六年三月(一八七三)に大小区画制度を定め、明治六年六月宇都宮県と栃木県が統合されると、ここに一三大区一一四小区となった。黒羽町は大田原出張所分管であった。
 この大小区の制度は明治十一年の郡制施行まで存続した。
 その後明治十二年(一八七九)六月警察管轄が変更された。黒羽町に関係ある町村を抜粋すると次の通りである。
 大田原警察署所轄区 合計百八十三町村
 八塩村、滝村、亀久村、片田村、檜木沢村、寒井村、矢倉村、須佐木村、大豆田村、須賀川村、雲岩寺村、川上村、下中野内村、南方村、北野上村、堀ノ内村、大輪村、前田村、黒羽田町、蜂巣村、余瀬村
 大田原警察署芦野分署所轄区 二十九町村
 木佐美村、寺宿村、両郷村、河原村、仲野内村(原本通り)、大久保村、久野又村、川田村、
 大正十五年(一九二六)七月一日より施行された警察署管轄区域は次の通りで、県下に十五警察署があった。
〈川西警察署〉川西町、黒羽町、大山田村、湯津上村、須賀川村、両郷村、伊王野村
 これよりさき明治十三年七月一日黒羽向町に大田原警察署黒羽分署を開設した。この黒羽分署は明治二十二年(一八八九)五月大田原警察署川西分署と改称し、大正十五年(一九二六)七月一日警察分署制度の廃止に伴い川西警察署となった。管轄区域は前記の通りである。
 昭和二十三年(一九四八)三月七日国家地方警察川西地区警察署と自治体警察の川西町警察所と黒羽町警察所が誕生した。
 新警察制度の発足に当って公安委員会の設置とこれを構成する公安委員の選任が行われ、黒羽町川西町の公安委員は次の通りである。
黒羽町 石川精一 大金源、増田太郎
川西町 室越金助、松本重忠、福田孝雄
 翌二十四年(一九四八)十二月十九日川西町黒羽町の自治体警察が合併し自治体警察組合黒羽警察署が発足した。
 当時の警察署の事務は左の通り分担された。
警務係(人事・装備・監察・教育・経理・通信・警察宣伝・福利施設・庶務)

警邏交通係(警衛・警備・交通取締等外勤一般)
防犯統計係(犯罪予防・統計・少年警察・経済取締)
捜査係(犯罪捜査・検挙・刑事警察)
〈各町村駐在所〉
  川西町(寒井)
  黒羽町(田町、片田、前田、北野上、)
  須賀川村(須佐木、須賀川)
  両郷村(中野内)

 昭和二十六年(一九五一)五月警察法の一部を改正する法律案を第十四回国会に提出し、同年六月に施行された。
 主な改正点は人口五千以上の市街的町村は住民投票によって警察を維持しないことができることであり、黒羽・川西両町は昭和二十六年九月二十一日住民投票を行い、次の結果となった。
町名廃止賛成廃止反対無効
黒羽町一、一八一一九二
川西町一、二七七一八〇

 自治体警察は地元住民の期待と信頼にこたえ愛されながらも 住民投票によって廃止されたが、主な理由は町の財政の行き詰りのためであった。
 昭和二十六年十月における地区警察署の名称位置および管轄区域は次のとおりである。
 川西地区警察署 那須郡川西町黒羽向町一〇四
〈管轄区域〉
  川西町・黒羽町・湯津上村・須賀川村・両郷村・伊王野村
 昭和二十九年(一九五四)七月一日発足した栃木県川西警察署は前記二町四ケ村を管轄区域とした。同年十一月三日伊王野村は町村合併によって那須町に含まれ黒磯警察署の管轄区域となり、ついで翌三十年二月十一日黒羽町・川西町・両郷村・須賀川村が合併し黒羽町となり、同日県条例第一号をもって川西警察署を栃木県黒羽警察署と改称現在に至り、管轄区域は黒羽町・湯津上村となる。

黒羽警察署

〈庁舎〉
 明治十三年(一八八〇)黒羽向町に二階建庁舎建坪四九・六平方メートル(一五坪)を建築した。敷地は約九二・四平方メートル(五八・二坪)であった。この庁舎は明治三十四年(一九〇一)に改築したが規模については不明である。
 明治二十三年(一八九〇)一月総工費九十五万五千円(二十九万は管内町村寄付)をもって庁舎の改築を決定。四月旧庁舎の取壊し、同年十一月二十七日竣工式を挙行した。新庁舎は木造二階建で二〇八平方メートル(六三坪)階上約一七八、五平方メートル(五四坪)であった。自治体警察のあった時代は階下を自治体警察、階上を地区警察で使用した。
 昭和五十四年(一九七九)四月二十九日、川西町大豆田三〇三の四に新庁舎建設、黒羽警察署はここに移る。
 工期は昭和五十三年(一九七八)十月十七日より五十四年三月二十五日であり庁舎は鉄筋コンクリート二階建、延五七〇平方メートル車庫・倉庫・自動車置場合わせて一八〇平方メートル、署長公舎・物置は各々七三・六九平方メートル敷地面積三〇〇・六八平方メートル総工費一億七百六十三万五千円であった。
 五十六年(一九八一)現在署員の数は警視一、警部一、警部補二、巡査部長九、巡査六、事務官六、計二十五名である。
 事務分掌は警務・会計・刑事・鑑識・防犯・警備・外勤・交通の八係となっている。
 駐在所は昭和二十九年(一九五四)七月には、黒羽警察署管内に八ケ所あったが、その後黒羽田町・北野上・片田・須賀川の四駐在所が廃止となり新に八塩に駐在所が出来、現在黒羽町では八塩・前田・寒井・両郷・須佐木の五ケ所となった。