本幅は古くから両郷の図として知られていた。黒羽藩主大関家の旧蔵品で、縦八三センチメートル、横一五八センチメートルの双幅である。
筆者は郷土の画家小泉斐であり、東郷の図には「文政八年乙酉夏日、恭奉公命謹以写於檀森斉中、臣小泉斐」とあり、西郷の図には「文政丙戌夏日小泉斐謹画」とある。画は黒羽城より東郷、西郷を眺望し、洋風の遠近法の構図を主体にして、写生風に描かれている墨筆淡彩画である。おだやかな線によって景観をたくみにとらえていて画境は深いものが感じられる。小泉斐については人物編に詳述
7 絹本淡彩黒羽周辺景観図 東郷、西郷図