9 絹本著色釈迦涅槃図

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絵所左近入道徳永の筆になる縦二・九メートル、横二・五四メートルの釈迦涅槃図の大幅で黒羽藩の菩提寺である大雄寺の大伽藍にふさわしいものである。延宝八年(一六八〇)神田安衛の寄進とあるもので、県下の涅槃図の中では真岡市無量寿寺のものとともに、もっとも大きく最古のものとされている。
 生死の因果を離れ諸煩脳を滅して、滅度寂滅の境にて入滅した釈迦の像がかなり大きく尊く描かれ、顔は静かで諸弟子の激情は大声をあげて泣き悲しむさまがあらわれ、そのまわりの鳥獣樹木とも丹念に精写されている。
 釈迦入滅の地にあったという沙羅双樹も明暗、生死の双樹として描かれ、人生の栄枯盛衰を象徴し諸煩脳になやむわれわれに多くの教訓を垂れている。
 この涅槃図の表装の縁のぼたんの模様は明治年間に修理が行なわれた際描かれたものである。釈迦が入滅した日である陰暦二月十五日に行なう涅槃会にはこの大幅が本堂にかかげられて法要が営まれる。