楊柳観音は、衆生済度の三十三観音の一つで、観音の慈悲が楊柳(やなぎ)が春風になびくように、衆生の願いに応ずるところから生まれたもので、左手に器そして右手に持った楊柳が、三昧耶形(象徴)の観音である。
薬王の観音で、種々の病気を消除する霊験あらたかな仏である。この仏画は文化三年(一八〇六)小泉斐が描いたもので讃に「文化丙寅秋日那須惣社司甲斐守従五位下藤原朝臣光定於神宮寺謹写」とある。この墨画は立像のお姿で、慈愛が溢れる優美な仏画で線も美しく、姿態は肉づきが豊かで量感に富み柔軟でふくよかである。温かさのなかに知性に富んだ美しい相貌で、透彫の宝冠と裳や軽く翻る天衣の表現などもせん細で美しい。
紙本墨画楊柳観音像