本書は、大関増業の自序によると家督を増儀に譲り、江戸箕輪の藩邸に閑居し乗化亭と称した晩年の天保十一年(一八四〇)に脱稿したものである。
『乗化亭奇方総目録』によると七十巻百三十一部あり、十冊に合本されている。非常に難語が多く、しかも木草学や漢方学の知識がないと難解であるが、内容は内科、外科、婦人科、産科、小児科、眼科、耳鼻咽喉科、精神科、製薬、救急看護等の全てにわたり病状あるいは製剤、処方、服薬を古今の流派や医書を引用しかつ確めて編述している。おそらく医学に通じている侍医等の補佐を得て完成したものであろう。