21 人面獣心の壁書

922 ~ 923
本幅は、黒羽藩士鈴木武助正長(為蝶軒)が、明和・天明のころ、郷方吟味役という農商の政務を掌る役に抜てきされて活躍したとき、領内に頒布した御教壁書(縦二六センチメートル、横三七センチメートル)と称する木版刷の一枚ものを条幅にしたてたものである。内容は、人体猫面の女が嬰児をおさえつけてひねり殺している絵を描き、「間引き」をいましめる文が書いてある。すなわち、当時の悪風俗である出生間引きは言語道断の大悪であり、万物の霊長である人間が行なうなら人面獣心である。子孫繁昌してこそ、家、国家のもといであると、神仏の教えから説いている。
 本幅は、封建時代の庶民の生活の一端をうかがい知る貴重な民俗資料である。