この山桜は谷間平地のつきる両郷磯上の、中の苗とよぶ小高い山にある。目通り四・三メートル、樹高一七メートル、樹齢約三百年と推定される。この山桜は清浄な八溝登山口一の鳥居の傍に生えているもので、石灯籠や記念碑などとともに、梵天(ぼんてん)などをあげた昔の磯上の氏子の宗教と生活を偲ばせている。
幹は下部がよじれるような形で木肌はたてにさけ、その暗灰色のさびた色が三百年の星霜を物語るかのようである。地上約四メートルのところで二分し、その一つはまた二~三枝に分かれ、枝を大きく拡げて傘状をなし磯上の里を抱擁している。