八溝山(一〇二二・二メートル)は栃木・茨城・福島三県にまたがる主峰である。頂上とその近傍に八溝嶺神社と日輪寺がある。(茨城県側にある)
八溝嶺神社は、社伝によると景行天皇四年日本武尊が東征のみぎり、これを創建したと伝えられ、三方を土塁で囲んだなかに拝殿と本殿とがある。南口に鳥居がある。鳥居は黒羽藩主大関氏が寄進するならわしになっていたという。この社は豊饒の神をまつり、例大祭には麓の大子町(茨城県)などから梵天(ぼんてん)が奉納されるならわしで、信者の登拝で賑わう。
日輪寺は白鳳十一年役の小角が創建したと伝え、大同二年弘法大師がこれを中興し、十一面観音を安置したという。なお永延年中、坂東第二十一番の札所になったと伝えている。
八溝登山には沢道を登る旧登山路もあるが、八溝ハイライン(栃木・茨城・福島三県連絡林道八溝山線=峰越三県連絡林道)は、深い緑と澄んだ空、野鳥のさえずりの中にあり、清浄無垢な新しい観光要素で、魅力溢れる登山ができる。八溝山はスギとヒノキの植林が進んだ山で、その林相と八重垣山の遠望はすばらしいものがある。なお頂上付近にはブナ、モミなどの原生林もみられる。頂上からは筑波山と日光・那須・阿武隈の山々の連なりが一望に見渡すことができ、その雄大さは心を洗うものがある。