(九) 御亭山と綾織池の伝説

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 御亭山(こでやさん)(小手谷・小塒とも誌す)は、標高五一二・九米のよく浸食された山であるが、山頂の二峰は、金剛・胎蔵の両界であるといわれ、山頂近くの『綾織池』の畔に、豊玉比古命と豊玉比女命の二柱が祭られている。

御亭山の『綾織池』

 綾織池を水源とした『竜沢』等は、滝村や片田の郷を潤し、豊饒の歓をもたらしたのである。
 此処は、『那須絹』の伝承地で、綾織姫の話が口碑に残り、貸椀伝説等もある。延宝の頃か、時代は不明であるが、綾織池が崩かいし、竜女は姿を消し、都の綾小路『蛇女房』の話へと発展していく。また池の亀は這い出し岡をなしたとも伝う。『亀山』がそれである。館跡には竜神が祀られている。
 御亭山奇談としても、『金色姫』の話がある。常陸国豊良湊の権太夫が、沖で浮木とともに漂っていた『金色姫』(本体は蚕)を救い上げたという。『蚕種』伝来にまつわる話である。いわば那須絹物語の序章である。