1、新小唄 水の黒羽

1024 ~ 1025
   五来素川 作詞 大村能章 作・編曲
 
  一、水の黒羽(くろばね)、早瀬にさめて、月に寝られぬ
    窓に明け行く、花の城、チョイト花の城
  二、せくな蜩(ひぐら)し、まだ日は高い、今が釣り時
    川は那珂川(なかがわ)、鮎の川、チョイト鮎の川
  三、那須の篠原(なすのしのはら)、しぐれが渡る、八溝下(やみぞおろ)しか
    霧にうず巻く、枯(かれ)すゝき、チョイト枯すゝき
  四、月の入(いり)しろ、河鹿(かじか)の沢に、夜網(よあみ)うちかや
    友を呼ぶ声、川千鳥(かわちどり)、チョイト川千鳥
  五、月は流れる、流れて止まる、止る月影
    渕の鮎奴(あゆめ)が、独りじめ、チョイト独りじめ
  六、那須の高館(たかだて)、与一(よいち)が矢さき、寄手いろめく
    旗のなだれの、一(ひと)なびき、チョイト一なびき
  七、紺(こん)の手さしに、あみ笠姿(すが)だ、煙草(たばこ)かきかや
    野辺にさら/\紅(べに)だすき、チョイト紅だすき
  八、急げ飛行機、金丸原(かねまるはら)で、空の飛雀(ひばり)が
    恋のテノール、待ちこがれ、チョイト待ちこがれ
  九、月のかくれ家(が)、黒羽城に、春はゆかしや
    伊達の昔の、花見唄、チョイト花見唄
  十、朝の那珂橋、さぎりがこめて、渡る紅帯
    うしろ姿の、ほの/゛\と、チョイトほの/゛\と
 十一、夏の高岩、昼ねにござれ、御殿山(ごてんやま)から
    聞くも涼しい、蝉(せみ)しぐれ、チョイト蝉しぐれ
 十二、盆の娘達ちゃ、那珂川べりを、花のぼんぼり
    水にちょろ/\、はれゆかた、チョイトはれゆかた
 十三、朝の便りを、待つ川下に、こゝが見頃と
    紅を流した、もみじ時、チョイトもみじ時
 十四、萩の花床(はなどこ)、夜露にぬれて、虫の恋歌
    秋の夜すがら、月がきく、チョイト月がきく
 十五、花が烟(けむり)か、けむりが花か、浮世(うきよ)はなれた
    春の炭やき、さくら時、チョイトさくら時
 十六、夏の朝露、早瀬の笠は、竿(さお)が命の
    浮世忘れた、釣の人、チョイト釣(つり)の人
 十七、東山から出て来た月も、歌にひかれて
    雲のほゝかぶり、盆おどり、チョイト盆おどり
 十八、那珂の早瀬を、燕(つばめ)が下る、燕早いか
    水が早いか、鳥にきけ、チョイト鳥にきけ
(注)『水の黒羽』は、帝国蓄音器株式会社(テイチク)により『レコード』に制作された。〝美ち奴〟が唄を担当したが、地元の〝田代祐〟も唄っている。