5 農協合併

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昭和三十六年以降、日本経済の発展は目覚しく高度成長を遂げたが、農業は他産業との対比に於て生産物、ないし生活水準の格差が著しく開き、国民の食糧の消費構造も澱粉質食品から畜産物果実等に移行し、米麦たばこ中心の農業経営は、大きな転換を余儀なくされ、加えて当時の一般経済界の労働力不足、賃金インフレは、農村における人口流出を激化し、兼業農家の増加を招いていた。このような激動期に農業が自立して行くためには、従来の農業より脱皮し、企業として農業経営を行う考え方を確立する必要に迫まられて来た。企業的農業として発展するためには、生産設備の充実のための多額の資本と、高度の生産技術が必要になって来た。このような農業及び農業をめぐる諸情勢の変動に対応するため、農業協同組合の機能についても検討が迫られ、その組織・事業・財務全般について再編が要請されて来た。
 このことは昭和三十七年頃より論議されて来たが、その機熟さず、三十九年二月、黒羽・川西・両郷・須賀川の四農協が合併すべく協議会を作り各農協の財務調査を行った。
 昭和四十年五月九日川西農協より合併不参加について町長に申入れあり、事態は急変した。不参加の理由については、四十年十一月二十五日両郷農協合併総会議事録に、次の様に書いてある。組合員より川西農協不参加について質問あり。落合組合長より次の通り説明あり。
 「川西農協不参加については、私達としても心配致し、三農協の組合長等とも相談致し、一諸に合併するよう再三話しあい、町としても川西の町会議員と協議会を開き、又戸村町長自身、池沢組合長宅を訪問したのですが総会の申合せのためどうしようもありません。このことについては、川西農協第十七回通常総会に出席された中央会支所長横山氏が一番よく知っていると思いますので、御説明願います」
 中央会那須北支所長
 「私は川西農協の総会に出席しましたが、この総会で二~三の方々が合併反対をとなえ、今後合併協議会に出席しないでもらいたいと言うようなことを言い議題外であったので合併をしないことを申合せしました」(以上「」内原文のまゝ)
 四十年七月二日、及び十二日合併協議会幹事会の合同会議を開催し、七月二十三日黒羽両郷須賀川の三農協合併を決定。
 八月十一日より二十三日まで三農協関係職員が各事業ごとに経営計画書を作成、一方幹事会は合併計画案の作成を行う。その大要は次の通り
 (1)合併しようとする組合 黒羽・両郷・須賀川の三農業協同組合
 (2)組合の名称 黒羽町農業協同組合
 (3)新組合の地区 黒羽町の区域
 (4)日程
  合併基準日 昭和四十年二月二十八日
  合併議決日 昭和四十年十一月二十五日
  合併予定日 昭和四十一年三月一日

 (5)出資金の調整
  組合員一人当り出資金の不均衡については合併後
 (6)設立委員の選出
被合併組合の資格を有する者の中から総会で選出する設立委員は各組合五名とする

 (7)新定款の基本となる事項
 ①事務所黒羽町に置く
 ②組合員の資格 農協法による
 ③出資金
出資一口の金額は千円とし一組合員の有することの出来る出資口数の最高限度は五百口とする

 ④役員の定数理事十二名 監事三名
⑤役員の任期 三ケ年とする(だゞし合併当初の役員は昭和四十二年二月二十八日とする

 ⑥常勤役員 理事は組合長一名専務理事十一名を互選する
 ⑦議決機関
ア総会および総代会を採用する  イ総代の定数は百十二名とし任期は三年とする  ウ代理人は五名以上の組合員を代理することが出来ない

 以上の基本構想案を作成、四十年九月九日より二十二日まで、各地市ごとに部落座談会を開催、合併についての説明並びに合併趣旨の周知を行い組合員の理解を求め、各組合とも同意を得た。
 昭和四十年九月二十五日合併予備契約書の調印を行い四十年十一月二十五日、各農協ごとに合併に対する臨時総会を開催、各農協とも合併に賛成、原案通り可決決定した。
 四十年十二月九日第一回設立委員会が開催された。各農協に於て選任された設立委員は次の通りである。
黒羽農協 大野清司 五味渕寛 菊池博 稲野正典 斉藤酉之助
両郷農協 落合章太 笹沼菊雄 益子武 蓮実武雄 岡野滿
須賀川農協 鈴木恒之助 益子明 佐藤重之 屋代六郎 戸村宗一
 以上十五名出席設立委員長に鈴木恒之助、事務局として池澤正喜・小藤一・佐藤一男・益子忠男・梁瀬茂が任命された学識経験者として戸村大蔵・梅原均・古泉光一・菊池得三が推せんされた。
 昭和四十一年三月一日登記完了、黒羽町黒羽田町九十四番地に仮事務所(元柔道場を設置、同日黒羽町農業協同組合として発足す。)
 昭和四十二年四月二十三日第一回総会に於て、本事務所建設計画を左記の通り提案決定す。事務所の総坪数百七十七、五坪、鉄筋コンクリート二階建
 内訳 本館百七十七、五坪(坪十二万として二千百三十万)
附属建物 車庫燃料庫オートバイ置場七十七万円  備品机・椅子外八十万円

 総工費概算二千二百八十七万円(設計変更等もあり総建設費は三千六十四万三千円となった。)
 昭和四十四年十二月二十五日、本所事務所落成のため仮事務所より移転現在に至る。
 昭和四十五年五月、組合長に笹沼菊雄専務理事、佐藤重之参事、高梨義彦が選任された。合併後の主要勘定の推移(後記)をみると、いずれも計画以上の成績となり、資材倉庫農機具センター・生活センター(黒羽・両郷)ガソリンスタンド(黒羽・両郷・須賀川)種子センター(黒羽・両郷)こんにゃく荒粉工場並びに荒粉貯蔵庫(須賀川)育苗センター(黒羽・両郷)野菜集荷所(黒羽・両郷)移動購買車等組合員のため種々の設備が建設されたことは喜ばしい。

黒羽町農協種子センター
種子センターは両郷支所にもあり県内始め、全国に種子籾を出している。

 川西農協も昭和四十三年より五十四年の主要勘定の推移をみてもわかる通り、準備金・積立金・未処分利益・剰余金等順調に上昇している。特に米の集荷は六万五千俵に達し又共済事業について契約高百六十三億、一戸平均三千万余となり、県下第一位と云われている。このことは、組合員各位と役職員のたゆまざる努力の賜である。
 たゞ、現在の農業事情をみると農産物は軒並み過剰となり、米麦のみの耕作では、こうした情勢に対抗するには困難である。企業として農業経営を発展させるには、生産設備の充実のための多額の資本と、高度の生産技術が必要となり、資本主義社会における商品生産は大量生産大量取引が有利であることはいうまでもない。特に今後の農業は、町の行政と農協が一体となり、基盤強化を行い、組合員の組合として、組合員に対し奉仕出来得るよう努力すべきである。そのためには黒羽・川西両農協が共に相携え時期をみて合併することが望ましい。
昭和43年~54年までの主要勘定の推移 黒羽町農業協同組合
(単位:千円)
年度末434445464748
勘定科目
現金預金145,384100,824174,532232,2991,375,2421,546,939
貸付金541,940669,993780,502870,672866,6871,042,784
経済未収金5,0073,0461,7271,37131,52961,404
棚卸資産45,03444,52832,00647,86950,067102,269
固定資産40,77098,252108,161127,955139,756156,338
外部出資11,47212,38613,6254,72315,87317,392
貯金595,948677,729796,2661,011,8222,262,5052,647,684
借入金125,369154,285181,328160,43442,29639,436
共済資金10,13413,66817,28013,70221,64822,052
経済未払金9,14815,26115,69619,83227,96457,522
諸引当金10,89735,59844,03159,21381,725106,828
出資金35,98742,76254,74857,89559,50960,26,8
準備金積立金2,4643,1563,4643,7644,2645,814
未処分利益剰余金4,8091,9241,7622,9885,41216,345
 
年度末495051525354
勘定科目
現金預金1,190,3641,382,3261,428,4151,548,3251,916,5332,344,000
貸付金1,291,0811,563,4771,762,2651,916,4581,956,8001,990,304
経済未収金16,78233,02731,24847,59590,334244,165
棚卸資産143,382177,644165,596174,202192,633204,854
固定資産166,706167,758176,522239,441242,694268,252
外部出資21,71924,38327,58930,97536,82044,728
貯金2,481,9272,892,0243,069,9523,349,3753,753,1154,286,737
借入金34,91878,93683,087106,299120,239115,286
共済資金26,78231,68837,17832,76748,80651,168
経済未払金32,94265,37283,54267,12546,80588,438
諸引当金134,358150,767183,310209,355242,947270,482
出資金90,903104,242104,673107,989112,169145,092
準備金積立金13,43822,37731,37838,71853,71873,718
未処分利益剰余金18,97416,70415,50823,67131,54326,024

昭和43年~54年までの主要勘定の推移 川西農業協同組合
(単位:千円)
年度末434445464748
勘定科目
預金82,744111,504154,879144,256188,603249,643
貸付金198,234191,383202,039241,894247,739364,620
未収金43,54941,50632,38636,82739,44957,291
棚卸資産6,4814,4637,8167,9137,68510,132
固定資産15,25630,46535,07364,74281,29682,406
外部出資4,7565,1495,6046,0966,5816,993
貯金227,480243,631289,477316,509442,052576,732
借入金61,82353,84745,10847,47033,356115,274
共済資金1,7001,7022,3842,7964,6215,838
未払金3,7142,8644,1054,8136,69527,030
諸引当金7,5159,77812,59817,87017,41621,931
出資金20,10134,38837,71241,07741,10641,171
準備金積立金5,5146,71410,66415,66418,66421,664
未処分利益剰余金5,0638,79110,2577,2247,24910,508
 
年度末495051525354
勘定科目
預金268,877321,761337,370480,863711,193835,568
貸付金481,580614,012762,969799,529809,147839,192
未収金96,604102,3873,10719,91225,50028,165
棚卸資産27,02935,44037,77726,59542,47745,955
固定資産82,906103,070104,257117,827118,800118,126
外部出資7,6078,3509,38110,51211,70215,285
貯金719,133811,800917,8091,087,4171,329,9151,427,787
借入金75,885167,368120,69979,33780,95685,737
共済資金5,6873,2085,1934,8126,6237,785
未払金19,18124,51413,64323,96417,05420,001
諸引当金25,47527,68646,85756,45365,91976,895
出資金41,14541,17041,17959,52566,36773,600
準備金積立金26,16434,16443,16454,16466,16474,177
未処分利益剰余金16,37018,69721,75024,27820,19541,192

   農業協同組合歴代組合長
 旧黒羽農協  大野清司
 旧両郷農協  狸塚栄 落合章太
 旧須賀川農協 渡辺栄作 佐藤正 鈴木恒之助
 黒羽町農協  大野清司 笹沼菊雄
 川西農協  池澤文吾 松本清吾
  参考文献
   栃木県農業団体史
   栃木県農業協同組合史
   栃木県農業協同組合要覧