(一) 黒羽田町

1090 ~ 1091
 黒羽田町(くろばねたまち)は、その名が示すように黒羽城の朱雀(しゅじゃく)(南方の神)を卜して那珂川の河岸段丘上の沃地に開かれた集落で、城下町にふさわしい名である。
 主な地名に岡沢・岡ノ台・西崖・大宿・井戸久保・風呂下・田町・砂原・黒羽山などがある。
 現在黒羽町役場の所在地で、黒羽向町と共に町の中心街をなしている。商店など軒を列ね、製材工場、医院などもある。黒羽小学校、同中学校、第二保育所、学校給食センター、老人憩の家清流荘、信用組合、森林組合、葉煙草収納所、神社、仏閣などもある。
 集落発達の要因として次の諸点があげられよう。
 林産資源豊かな八溝山地の樹枝状に開けた谷口に位置し、那珂川に臨み、広闊な大那須に対する交通上の要衝地にある。また古代那須国核心部の外縁に属し、黒羽藩一万八千石の城下町であった。ながく東野地方の要(かなめ)として、政経上の中心地でもあった。しかし現在は主要交通路の西遷と社会構造の変化のなかで、その様相は少しく変貌をみせている。
 黒羽田町の大方(おおかた)はもと阿久津村と称した。那珂川と松葉川(前田川・下の川とも呼んでいる)との合流する所にある。そこは大宿侍邸であった舌状台地と城下の町屋が形成された平地である。『阿久津』は『圷(あくつ)』に代表され、塙に対比され、『渡し場』に多くみられる集落名である。なお松葉川はこの辺り峡谷状をなしている。

田町の集落景観(役場付近)