湯津上村長 谷国夫
先祖ののこされた生活文化の遺産を守り、かつ、これを後世に継承することは、現代に生きる私達の責務であります。
人類の祖先が、数千万年の太古に地球上に現われ、それから人間生活の悠久な時間が、その祖先たちによって、脈々と継承されて参り、われわれ人類の長い歴史は築き上げられたのであります。わが湯津上村の歴史も当然、この範疇のひとこまに当る訳であります。
おもいみますに、わが村は最も輝かしい古代歴史のふるさとで、私は下野の国、すなわち栃木県の発祥の地であると自負しておりますが、これを立証するように、村には那須国造碑や、侍塚古墳などの国指定の尊い文化財や遺跡などがあります。そして、村は悠遠な歴史を持っておるのでありますが、これらの事象や、人間生活の組織やありかたを、詳細に調査し書きとどめることは意義あることと思います。
そこで私は、行政の立場から、私たちを育みそだててくれたふるさとである湯津上村の歴史と、生活文化の経緯をあらゆる角度から、記録的にまとめあげるべく村誌刊行の事業を企画いたしました。これまでに湯津上村には、その定本というべきものがありませんでした。四年前に村誌編さんのことが、村の機関に諮られた結果、編さん委員が委嘱されました。爾来、委員の方々が鋭意、調査・考証等の仕事を進められ、困難な資料の収集や古老の聞き書きや伝承・伝説、及び学者の文献等の調査累積によって、ここに村誌編さんの運びとなったことは、喜びに堪えないところであります。そして、この貴重な村誌を後世に伝承することのできることを誇りといたします。
編集完了していよいよ上梓の運びに至るに際し、困難な資料収集と厖大な原稿執筆の仕事に、献身的に努力下された編集委員の諸氏、及び、これに惜しみない協力を寄せられた古老と村民各位に深甚なる敬意と感謝を捧げるものであります。
殊に、連日執筆編集の仕事に従事され、編集の中心的役割に精励された蜂巣丈平・小林鑑・生田目藤市の三氏の、厚きご尽力に対し深くお礼を申し上げます。
村誌出版に際し、希くば、村内各戸一冊を所蔵され、家憲とともに長く後世に伝えていただければ幸甚と存じます。