かつて、子どもたちの遊び道具の一つになって、箒川の川原や中の原の原野などに多く見られた「カワラノオバサン」「カワラケンポコ」も現在ではほとんど見られなくなってしまった。草全体に、真白い細い毛が生えている。早春、六枚の暗赤紫色の花びらのようなものが見られるが、実はこれは、花びらではなくてがく片である。荒涼たる砂地にうつむきかげんに咲く風情は、何にも例えがたい情緒をかもし出して、人心を陶酔の世界へと蠱惑(こわく)する。花後の種子が、ちょうど老人の白髪に似ているので翁草という。現在、中の原の開拓、箒川の砂利採取などによりほとんどその姿が見られなくなってしまった。なんとか自生地を探し出し、ぜひ保護したい植物の一つである。
オキナグサ