目次
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第二編 歴史
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第一章 考古学上からみた湯津上地方
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第二節 繩文時代
湯津上地内の遺跡
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湯津上地内には、上野原(うえのはら)、大林(おおばやし)、上ノ台、田尻(たじり)、東山(ひがしやま)、坊ノ内(ぼうのうち)などの遺跡やさきに記した岩船台遺跡などが分布している。東山遺跡や新宿遺跡からは石鏃が、坊ノ内遺跡からは磨製石斧が出土している(第13図~第15図)。これらの遺跡の大部分は繩文時代中期から後期初頭にわたるものである。本村は他の市町村に比較して、中期の遺跡が圧倒的に多い。これはまったく不可解なことである。これだけ多くの遺跡がほぼ時期を同じくして存在することは、たとえ狩猟・漁撈によって山の幸・川の幸が容易に得られたにしても、お互いに生活は行き詰まるのが当然と思われる。その常識を破って距離的に近いところに、これだけの遺跡があることは、よほど食糧を獲得することが容易であった自然環境が本村内にはあったのであろうか。これは今後の課題といえそうである。東山遺跡出土の石皿は側面を彫刻した珍しいものである。
第13図 東山遺跡出土の石器
第14図 東山遺跡出土の石鏃と片府田富士山遺跡出土の磨製石斧
第15図 新宿遺跡出土の石鏃