1 村役人

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 村役人は村方三役、また地方三役とも言われ、その選び方には世襲制と交替制がある。交替制の場合は、領主側で指定するもの、前任者が後任者を定めて願い出るもの、年番によるもの、選挙(入れ札と称した)によるものなどがあった。選挙といっても、現在のように全村民が投票するのではなく、本百姓である戸主だけが投票するのである。この場合でも、選ばれる方は村内での家柄が重んじられていたようである。湯津上村の場合は年番の例があるが、何れにしても領主が命ずるもので、つぎのような下知書が残っている。
    申渡之事
其方儀兼而深切ニ取斗申候ニ付、依之割元見習申付候、其上共万端心付行届様可致可得其意もの也
 天保七申年六月
       野州那須郡湯津上村
          江崎源治右衛門
 坂亀印

(江崎源治右衛門家文書)

       下野国那須郡湯津上村
              名主 安左衛門伜
                     房之進
其方儀、名主役見習被 仰付候間、入念可相勤もの也
 地頭
辰十一月  役所

(永山正樹家文書)

 坂亀とあるのは、旗本坂本亀太郎の略である。このような略称はしばしば使われている。後者の年月の辰は、安政三年のものと推定される。