また、昭和五十三年から強化された水田の減反政策は、減反面積を部落単位に割当て、部落に連帯の責任を負わせ、これを消化出来ないときは、個々の農家への奨励金は支払はないというもので、これは明らかにこの五人組制度から生れた発想であろう。
五人組帳(蜂巣英夫家所蔵)
元文元年
下野国那須郡湯津上村五人組帳
辰 七月 名主
源次右衛門
(注) 門屋 農家の屋敷の中にある小屋または納屋、下男・作男などが住む小屋。
社人 神職のこと。
切支丹ころび 切支丹教徒が、宗門を改め仏教に改宗すること。
(注) 引負 ここでは年貢を使いこんでしまうこと。
欠落 失踪して行方をくらますこと。
(注) 出作 他村の田地を耕作すること。
浮役 年貢以外の雑税の一つ。次の小物成のうち。
小物成 正式の租税以外、山野・池沼などに課せられた雑税のこと。
入目 費用、入用。
押切 割印すること。
(注) 差次勘定 いわゆる匙加減のことならん。
右之条々堅相守可レ申、若違背仕輩於レ有レ之者可レ為二曲事一、此書面名主方に写置、毎歳正月五月九月、一ケ年に三度づつ、村中大小之百姓寄合慥に読聞せ、常々此趣合点仕罷在候様に、入念ヲ可二申付一もの也
元文元年辰五月
追触
前書之六十五ケ条、一々奉二拝見一、御法度の趣慥に受届け、村中大小百姓門屋借屋のもの迄、十五歳己上の男の分は、此五人組に壱人も除き候もの無御座候、右の御法度書、名主方に写置被二仰付一候通読聞せ、銘々合点仕候、急度相守可申候、惣而此帳面村中判鑑に罷成候に付、壱人も不残判形仕二上申一候、若御法度の儀相背候族御座候はば、其当人は不レ及レ申、名主五人組共に、如何様の曲事にも可レ被二仰付一候、為レ其連判仍如レ件
下野国那須郡湯津上村五人組帳
辰 七月 名主
源次右衛門
一 従 御公儀被 仰出候御法度書、名主方へ写置、常々大切に心掛相二守之一、名主組頭共寄合村中へ申渡、違背為レ仕間敷候事
一 切支丹宗門之儀、前々御改之通、村中大小之百姓之儀ハ不レ及レ申、召仕之者、門屋・借屋其他出家・社人・山伏・行人・虚無僧・鉦扣(打)(かねたたき)・穢多・乞食・非人等に至迄、村中に居住之者、壱人も不残人別相改候而、菩提寺之宗門之外御法度之宗門之者、村中は勿論、他所に而も見出し聞出し候はば、早々申上、御褒美可申請候、若隠置脇より訴人有レ之候はば、名主五人組迄、急度曲事可二申付一候事
付り 切支丹ころびの者有之は、帳面に記指出可レ申候、若他村より不レ限二男女一に縁組等にて右の族来り候はば、早速注進可仕候、惣而他所より越来候者、又は下人等抱候共、宗旨相改寺請状可レ取之事
(注) 門屋 農家の屋敷の中にある小屋または納屋、下男・作男などが住む小屋。
社人 神職のこと。
切支丹ころび 切支丹教徒が、宗門を改め仏教に改宗すること。
一 五人組之儀、毎年可レ改レ之、町は家次郷は最寄次第に組合、慥成者組頭に相定、諸事御法度之趣急度相守可レ申候、若五人組にはつし置候歟、又は組頭の不レ随二下知一徒者有レ之候はば、其一組より可二申出一、詮儀の上急度可二申付一候事
一 御用之儀、何方より申来候共、無遅滞可二相勤一候、廻文之儀日限刻附遅仕間敷候事
一 耕作之儀、念入仕付草耕仕、御年貢米永割付之通、皆済可仕候、若未進(年貢をまだ納めないこと)仕候百姓有レ之候はば、急度可二申付一候、且又耕作不情(精)成百姓田畑荒置候はば、名主年寄吟味可レ仕候、尤小検見之節も引方相立申間敷候事
附り 口米銭之義、前々御定之通に可仕事
一 百姓商人家業を第一に相可レ勤候、耕作之間たりといふ共、何成共其所に而致来候仕業無二油断一心掛、朝夕共に渡世に心を付、妻子下人等迄も其善悪を申聞せ、縦(たとえ)凶年の時節たり共、取続候様に常常思慮仕、渡世大切に心掛可レ申候、若百姓に不似合遊芸を好、所帯之費にふレ構不行跡之者於レ有レ之は、無レ隠可二申出一、吟味之上急度可二申付一候事
附り 耕作商売等も不致、家職共不知者村中に有之候はば、無レ隠可二訴出一候事
一 御年貢米金銀皆済無レ之以前、穀物他所へ一切不レ可レ出レ之、若御年貢引負欠落可レ仕様子、及レ見候百姓有レ之候はば、其五人組詮議仕名主方へ相談を以無二油断一押置、欠落不レ仕様に可レ致、御年貢之儀五人組・名主・組頭了簡仕候而、急度皆済可レ為レ仕候事
(注) 引負 ここでは年貢を使いこんでしまうこと。
欠落 失踪して行方をくらますこと。
一 御年貢米拵之儀、随分念入あらおれ・小米・青米・死米・ちりごみ抔無レ之様に拵立可レ申候、俵拵之儀、二重俵に而中摺繩を以小口蜘かかり・茶かかりか何れ成共、一様に可レ仕候、舟積之儀は、紙に而国郡村々名主・御代官之氏名・年号月日・米主・枡取・米見之名銘々書付判形致、俵毎に可レ入レ之、上札は木札か竹札に而、国郡村御代官之氏名主名(ママ)斗り可書之、札裏に貫目可記事
附り 御米舟積仕候に、沢手(水に濡れた米)送不レ申様に、上菰掛可レ申、御蔵前に而廻し俵之中札無レ之候而、枡目不足に候はば、米主詮儀の上急度落度可二申付一候事
一 御米江戸廻しの時上乗(船に乗込み、荷物を管理監督する人)納人之儀、吟味之上働有レ之慥成者を相極可レ申候 勿論上乗極候はば、私曲仕間敷之旨、証文取置可レ申候
御蔵米入用並雑用多不レ入様に可レ仕、尤委細に帳面に記し、役所に指出し吟味請可レ申候事
附り 御米郷倉へ納置候はば、名主・組頭相印仕置、御用之節出し可レ申、急の儀に而も名主壱人に而封切申間敷候、郷倉雨不レ漏様につぶれざる様に念入、壁垣下敷等可レ仕候、其上番をすへ無二油断一可レ仕候事
一 毎年御年貢割付目録出し候はば、村中之者拝見仕、名主・年寄方より大小之百姓出作之者にも、不レ残相触寄合候而致二割合一、浮役・小物成に可レ納米金壱人前宛委細に書付、小百姓にも疑敷不レ存様に其訳申聞せ、其上割付之奥に別紙ニ継候而、立合披見仕候者、印形可二取置一候、年貢割仕節、村中夫銭小入用御年貢入目一同に不レ致、指割を以可二し割合一す、御年貢の米金、申渡す日限之通相納申候様に、常々村中可二申合一事
一 御年貢米金銀、名主方へ取集候節、帳面金銀米銭之員数、主之名、月日記レ之、納主之判形取置、請取手形には致二判形一、請取手形之判形帳面と押切、納候度々相渡、後日に出入無レ之様可レ仕候、若し不念に而、請取手形不レ為二置取一、後日に訴出候共、取上間敷候事
(注) 出作 他村の田地を耕作すること。
浮役 年貢以外の雑税の一つ。次の小物成のうち。
小物成 正式の租税以外、山野・池沼などに課せられた雑税のこと。
入目 費用、入用。
押切 割印すること。
一 御年貢皆済の納払勘定致候節、皆済目録に判形致可レ遣レ留、村中大小百姓立合相改、相違無之趣奥書、惣百姓連判仕置、追而役所へ可レ入二披見一候事
一 惣而従二公儀一被レ下候人足扶持、其外代金渡し候はば、早々当座銘々割致し、帳面に請取候趣為二書付一、判形可二取置一之差次勘定ふレ可レ致事
(注) 差次勘定 いわゆる匙加減のことならん。
一 公用の儀又は村中申合等の儀に付、百姓寄合候節、村用懸り候食物酒肴等、一切給申間敷候、堤・川除・用水堀さらひの時、人足等村入用に懸酒給させ間敷事
一 手代・書役・妻子・召使等之儀は不レ及レ申、若党中間等に至迄、金銀・米・銭・衣類・諸道具・酒肴其外軽き者成共、音物(おつかいもの)仕間敷候、右之者共へ貸借物或は押売何事によらず、不作法の儀致候はば、無レ滞有躰に其趣可二申出一候、隠置後日に相聞候はば、名主年寄可レ為二越度一事
一 家来並手代之召仕、村方へ口上に而申儀は勿論、役所之印形も無之書付を持参仕候而ハ、何事を申付候共、一切承引不レ仕早速可二訴出一事
一 自分並手代村々へ相廻り候節、飯米・塩・味噌・薪・野菜等其所に而相場値段調候時々に代物受取、売上帳面に判形可レ仕候
一宿昼休之処に而も、右之通上下共に百姓之馳走に不レ成、村々費無レ之様に申付候条、酒肴等此方より指図無レ之様に候者、何に而も調置申間敷候、若調置此方へ不レ入に付、寄合呑喰村入用に割掛候はば、名主年寄可レ為レ曲事、無二差図一人馬集置、万百姓之源を費し申間敷候事
一 村中年中之夫銭・懸り物・小入用之儀、随分名主年寄吟味をとげ、入用多無レ之様に可レ仕候、毎年、前々年之入用帳写相添可二指出一候、吟味之上入用写帳此方に留置、本入用帳名主方へ可二相返一候間、年々村入用帳紛失無レ之様に可レ仕事
一 郷中に火事出来候はば、郷倉へ欠付囲可レ申候、勿論郷倉に無二気遣一火事に候はば、火本へ参り消可レ申候、惣而火之用心大切に可レ仕事
一 第一親に孝行を尽し、下人は主に能随、主人は召使を憐み、夫婦仲よく、兄弟親類親しく、友達(ママ)は老たるを敬ひ、物毎頼母敷諸人に対し無礼悪口不レ仕、つつまやかにして家業を専らにし、所之法を背へからず、又村中に勝れて親に孝行なるもの有之候はば、其子を見届委細に可二申上一、常々親に不孝を致し、心立悪敷、老若に対し我儘之勤仕、耕作に不二精入一、博奕が間敷儀がさつ口論を好み、夜あるき無作法にて、行跡ふ二見届一もの有之候はば名主五人組異見可レ申、若不レ用候はば其段可二申出一、隠置後日に顕れ候はば、其五人組共に可レ為二落度一、不行跡之百姓、御年貢方未進を有し候はば、其五人組並名主可レ致二弁納一候、然間見届け難ものには常々意見可レ仕事
一 田畑並山林永代売買御停止に候、もし無レ拠子細有レ之候而、年季限り質物に入候とも、吟味の上名主五人組加判を以、手形取引可レ仕候、尤田畑質物に入金銀を借、其田地金主に相二渡之一、御年貢諸役は先地主相勤候儀、是又御停止に候、惣而請人無レ之諸質物堅く不レ可レ取レ之、若盗もの等猥に質物に取候族有レ之候はば、急度可レ為二曲事一
附 御朱印地之田畑、質物には取申間敷候事
一 本田畑儀は不レ及レ申、或は荒起或は新田畑又は、切次の田畑畑成田等有レ之候分は、壱分の所なりとも申出、御年貢上納可レ申、如何様の悪所成とも荒し申間敷候事
附り 荒間並古荒其外、新田畑に起し可レ然所有レ之候はば、可二申出一候事
一 新地之寺社、堅く可レ為二停止一、惣而小祠・念仏題目之石塔・供養塚・庚申塚・石地蔵類田畑山林又は、道路の端に新規に一切建申間敷事
一 神仏開帳等致候はば、可二注進一候、他国へ当分持出、開帳仕候儀有レ之は、先速而注進可レ仕候、是又他所より神楽神躍等来候共、ふレ可レ請候、村中に少しの間もさし置申間敷事
附り 寺院の住持又は社人等替り目の節は、役所へ注進可レ仕事
一 前々より有来り候百姓潰し、田畑持添仕候儀は不レ及レ申、縦死失候而跡式潰百姓之田畑に候共、持添仕間敷候事
一 村中之者、或は立退或は焼竈、或は身上潰候而、住居難レ成もの有レ之は、注進可レ仕、尤如何様なる小百姓又は水呑百姓に候共、私として所を追出し申間敷候 並勘当不通の者於レ有レ之ハ、役所へ訴出可レ得二下知一候事
一 高弐拾石己下の百姓、子どもに田地分譲り候儀堅可レ為二停止一、弐拾石以上たり共、田地分候はば、訴出可レ請二指図一、惣而新地に百姓有付候はば、可二注進一候、百姓跡式の儀、存生の内名主・年寄立会書付置、後日に出入無レ之様に可レ仕候事
一 百姓之子供、幼少にて親におくれ、百姓仕儀不二罷成一もの候はば、親類並名主五人組相談を以、後日に出入に不二罷成一様に証文取引、田畑預り置、御年貢諸役相勤、其子成人次第に願出候者無二相違一相渡、百姓に仕付可レ申事
一 独身之百姓無レ紛相煩、耕作成兼候時は、其五人組は不レ及レ申一村として助合、仕付草耕等仕、御年貢収納致候様に可二相心得一事
一 捨子堅仕間舗候、若他所之者捨置候はば、村中に而養育いたし、早速注進可二申出一事
一 人売買仕儀 弥可レ令レ停二止之一、百姓男女は年季限無レ之譜代に召抱候とも、可レ為二相対一次第之事
附 人請に相立申間舗候、無レ拠子細有レ之もの、名主五人組方へ改差図を可請事
一 御鷹場の外たりといふとも、鶴・白鳥取候儀、一切御停止候、村中において右之大鳥売買等仕間敷候、若相背もの有之候はば、可二訴出一事
一 牛馬売買之儀、慥成証人口入無レ之而、売買一切仕間敷候事
一 牛馬放れ来り候はば、つなぎ留飼料仕、早速馬主不レ知候はば、注進申出べし、勿論馬取放し不二相見一候はば、是又早々注進可二申出一事
一 御朱印伝馬人足之儀、御定之通出可レ申候、並往還之馬次不レ限二昼夜一駄賃人馬出可レ申、勿論増銭取申間敷候事
一 御伝馬宿へ定助代助より人馬寄候を、年寄吟味到猥に人馬之触仕間敷候、其宿之人馬を囲い置、面々勝手に能き荷物仕候様なる儀、一切不レ可レ仕
御朱印は勿論、駄賃伝馬人足之儀、常々致二吟味一置、滞り無之様に可レ仕事
附り 助郷へ人馬触来り候はば、刻限を不レ違出し、若人馬割に難二心得一事有レ之候共、無レ滞出し後日に可二申出一事
一 御用之人馬は不レ及レ申、本海道にて無レ之候とも、往来のもの駄賃ハ馬人足共に不レ限、昼夜無レ滞可二指出一、御朱印又は御証文も無レ之人馬出し候様に与申、或は駄賃銭も不レ出罷通候もの有レ之は、早々押置、名主年寄立会、怪敷躰ニ候ハバ役所へ可レ令二注進一事
一 山林竹木並枝葉一切伐取申間敷候、若猥之儀有レ之候はば、詮義の上、急度可二申付一候事
附 百姓四壁の竹木に候共、猥に伐取申間舗候事
一 入会野山面々持林にても、木の根を掘取申間敷候、鶴しはしを入候儀可レ令二停止一、田畑へ山崩砂入等無レ之様に、山林に苗木植立可レ申候、山中筋に而焼畑仕来り候所は格別、野火付候義可レ為二停止一事
一 御関所有之候川附の村々は、比丘尼・出家並前髪有之候ものは勿論、猥に川向人越申間敷候、通女渡船にても、又は其村に有レ之候小舟にても頼み、川向へ越申度と申もの有レ之、不審に相見え候はば、留置注進可レ申、密々猥成儀仕候はば、其船頭並名主五人組共に可レ為二曲事一事
一 大雨降所々川々水出候はば、無二油断一郷中壱人もふレ残罷出、堤切不申様に、弱き所へは土俵を拵置、入念堤かこい可レ申候、常々弱手の所候はば、其村は不レ及レ申、隣郷早々罷出、堤丈夫に可レ仕事
一 堤川除井樋御譜請所破損出来候はば、其場所相改、書付を以申出下知次第に可レ仕レ之、小破の分其村百姓役に早々繕仕、不レ及二大破一候様常々心掛可レ申事
附 堤川除・井樋・道橋前組合譜請所人足入用相滞候百姓候はば、急度可レ為二越度一候 惣而道橋の儀、破損の所候はば、無レ断慥拵可レ申候、且又堀を埋又は道をせばめ、秣場をせばめ、田畑不レ可レ仕 出前ニ無レ之所に新道新堀を不レ可レ附、尤用水に留置候所、断なく切落し申間敷候事
一 惣而用水百姓仲間にて公事出来不レ仕様に、常々致二吟味一、物毎正路に御用大切に可レ仕、若仮初成儀も支配人を申出、公事好仕候百姓有レ之候はば、当人共不レ及レ申、名主組頭共に曲事可二申付一候、一村之内、百姓中間六ケ敷儀出来候はば、名主組頭立合内々にて相済候様に可レ仕、悪心を以公事好を仕、非之事を働き、偽候書をたくみ、人に害をなすもの於レ有レ之は可二訴出一、詮議の上越度可二申付一候事
一 他所のものと出入の儀出来候はば、双方承合内々にて相済候様に可レ仕、若不二相済一儀にて他所へ訴訟申儀候はば、役所へ訴出得二下知一可レ申候事
附 親類縁者に候共、出入の手伝仕り、可二相済一儀滞り候様に仕候族有レ之よし、相聞候はば急度曲事可二申付一候事
一 公儀へ仕上け候手形証文之儀は勿論、百姓中間にて取引候手形も文言承届け、其上判形可レ仕候、左も無之後日に右の手形及二出入一候節、文言は不年(念)候へとも判形仕候、無筆故文言不レ存候抔申候はば、急度可レ為二曲事一候、此帳面の末に仕候印形之外、用申間敷候、自然印形紛失仕候百姓候はば、代りの印形指出、判鑑み直し可レ申候事
一 不レ依二何事一百姓悪心をくわだて、一列神水等呑候儀可レ為二停止事
一 喧〓口論出来候はば、所のもの出合相留め、埒明可レ申候、若内々にて不レ済儀に候はば、双方の申分可二訴出一、勿論手負のもの候はば押置早速可二申出一、縦あやまりにても疵付候とも、其子細即時に不レ可二訴来る一候、尤他村にて喧〓等有之節、ふレ可二馳集一候、人を殺立逃候もの有レ之候はば、隣郷のもの迄出合搦捕早速可レ遂二注進一、捕候儀難レ叶候はば、跡をしたい落付所へ急度可二申届一事
一 往還の旅人又は飛脚の者煩出し候はば、其所の名主組頭立合、其ものの名所出生相尋書付置、随分看病可レ仕、疎略仕間敷候、自然相果候はば、名主組頭立合候而、彼のものの諸道具相改、封印附置、早速そのものの在所へ申断べし、急病或は酒酔等村送に不レ仕、其所に而助抱正気に成して行歩も叶候はば、人を添村送に可レ仕事
附 路道にて行衛不レ知、首くゝり、自害又は倒死候もの有レ之候はば、早速訴可レ来事
一 盗人又は火の用心のため、村毎に詰能所に番屋を造り、夜番可二指置一、郷中の儀は勿論隣郷共に、盗人見出し鳴(声?)を立るにおいては、早々出合とらへ候様に可レ仕候、如何様の儀にても殺し申間舗候
附り 行衛不レ知・出家・社人・山伏・行人・虚無僧・鉦扣(打)・穢多・乞食非人惣而不審成もの、宿一切可レ為二停止、若不届の儀有レ之候はば、当人可レ為二同罪一事
一 人を殺し候もの、又は盗族其外徒もの、堂宮山林にかゝまり候はば、所のもの隣郷ともに立合、搦め捕り可レ申候 若其場所に而難レ捕候はば、何方迄も跡をしたひ、落着所へ断搦可レ申候 縦如何様のものに候とも、打殺し申間敷候事
一 他所より引越候もの儀は、跡々出所へ断致し、於レ無レ構は、請人並宗旨手形を取指置可レ申候、勿論出所行衛不レ知、壱人もの或は出家・社人・行人・山伏・虚無僧・鉦扣(打)・穢多非人惣而不審が間敷もの、或は欠落人其所に囲置候儀は不レ及レ申、一夜の宿も堅可レ為二停止一事
一 出所行衛不レ知浪人一切置申間敷候、乍レ然名主組頭吟味仕、慥成ものにて親類縁者請人に立ち、致二手形一候はば、得二下知一指置可レ申事
一 公事訴訟に罷出候節は、名主・年寄・五人組へ相届致二同道一候歟又は添状可レ致二持参一事
一 博奕・ほう引惣而賭勝負等何事に不レ依、博奕に似たる儀、一切可レ為二停止一事、並操かふき(歌舞伎)・舞廻・放下師其外何にても、見物遊物堅仕間敷候、惣而遊女郎の類、一切村中に不レ可二指置一一宿も堅仕間敷事
附 諸勧進乞食修業者、郷中猥に俳廻為レ仕申間敷候事
一 他国他村へ奉公に罷出候か、諸用候而参候歟、又は諸社山へ参詣仕候はば、小百姓は名主五人組へ可二相断一、名主組頭は役所へ可二相伺一事
一 用事有レ之候而郷中へ参候者は格別、用事なくして他所より節々来輩有レ之候はば、其所の出入仕候宿に、名主五人組遂二詮儀一、向後出入不レ仕様に可レ致事
一 手代より名主百姓は不レ及レ申、百姓仲間親類縁者の間にても、御年貢取引は勿論、金銀米銭其外小々事も手形可二取引一、後日に無二証拠一六ケ敷申出候はば、双方詮義の上曲事可二申付一候事
一 名主百姓妻子等に至迄、衣類の儀倹約相守り、百姓に不似合衣類不レ可レ着、尤沙綾・綸子・縮緬の類、えり帯にも仕間敷事
一 百姓家作の儀は、分限より軽く可レ仕、目立候譜請不レ可レ致、並に男女共に乗もの鞍置馬に乗候儀、堅可レ為二停止一事
一 仏事祭礼又は嫁取、新宅のひろめ、初出産の祝、惣而肴ケ間敷無レ之様に、分限より軽く可レ仕、其他親類出合常々振廻等に至迄、有合にまかせ随分軽く可レ仕、尤大勢集り大酒乱舞等一切可レ為二停止一事
一 郷村水論無レ之様に、先頃よりの例を以懸引、兼而可二定置一候、理不尽成儀仕間敷候、又は領境・山林境・野境・田畑屋敷境論有レ之時、喧〓口論仕間敷候、左様の節は申分可二訴出一候、若諍論の節、刀・脇指・弓・鑓・長刀を持罷出候者於レ有レ之は、曲事可二申付一候事
一 名主百姓刀指候儀は不レ及レ申、大脇指差候儀堅可レ為二停止一、若百姓に不似合致二風俗一、長脇差を指、喧〓口論を好、或は大酒を呑酔狂いたす輩有レ之候はば、無レ隠可二訴出一事
附 何方之不レ限二衆中一、刀指候奉公人に対し、慮外等一切仕間敷候事
一 有来候酒屋の外、新規の造り酒屋請売酒屋共に可レ為二停止一事
一 前々より定め鉄砲の外、此方へ無レ願自分として鉄砲調所持仕間敷候、猥に鉄砲所持候者有レ之候はば、無レ隠可二申出一、若隠置候はば、名主五人組共に当人可レ為二同罪一事
一 御高札大切に可二相守一、文字見え兼候はば、役所へ申出指図可レ請候、並周不二見苦一候様に可レ仕事候
右之条々堅相守可レ申、若違背仕輩於レ有レ之者可レ為二曲事一、此書面名主方に写置、毎歳正月五月九月、一ケ年に三度づつ、村中大小之百姓寄合慥に読聞せ、常々此趣合点仕罷在候様に、入念ヲ可二申付一もの也
元文元年辰五月
追触
一 名主加判無之質地証文之事
一 名主入置候質地、同名主又は組頭等加判之証文の事
一 拾ケ年季を越候質地証文之事
右三ケ条の儀並田畑永代売買又は地主より年貢諸役を勤、金主は年貢諸役を不勤質地の類は、前々より御停止にて、村方五人組帳に書記有之所、右の通不埒の証文を訴出候も無之、自今五人組帳名主組頭歟庄屋等より大小の百姓へ、度々読為レ聞不レ致二忘却一様に可レ仕候
一 享保元申年己来、年季明候質地は、自今年季明拾ケ年過訴出候はば、取上無レ之事
一 金子有次第可二請返一旨証文に有之候敷地は、質入の年より十ケ年過候はば、取上無之事
右二ケ条自今拾ケ年の内訴出候はば、裁断有レ之候、右年数過候はば取上無事
右五ケ条元文二歳巳二月中被二仰出一候趣、若相背候はば早速御訴可二申上一候、右之訳名主組頭五人組へ隠し願出候はば、急度曲事に可レ被二仰付一旨奉レ畏候、此書付名主方に写置、毎年正月五月九月壱ケ年に三度ずつ、村中大小の百姓寄合慥に読聞かせ、常々此趣合点仕り罷在候様に、入念に可二申付一もの也
前書之六十五ケ条、一々奉二拝見一、御法度の趣慥に受届け、村中大小百姓門屋借屋のもの迄、十五歳己上の男の分は、此五人組に壱人も除き候もの無御座候、右の御法度書、名主方に写置被二仰付一候通読聞せ、銘々合点仕候、急度相守可申候、惣而此帳面村中判鑑に罷成候に付、壱人も不残判形仕二上申一候、若御法度の儀相背候族御座候はば、其当人は不レ及レ申、名主五人組共に、如何様の曲事にも可レ被二仰付一候、為レ其連判仍如レ件
元文元年辰五月 野州那須郡湯津上村
名主 源次衛門
組頭 甚兵衛
年寄 文右衛門