昭和三十年代になると、経済力は戦前を凌ぎ、庶民には高嶺の花であったテレビ・電気冷蔵庫・洗濯機が続々と各家庭に入り、自家用水道が普及し、オートバイが自転車にとってかわった。昭和三十五年七月、池田内閣が成立すると、所得倍増計画が掲げられ、以後国を挙げてまっしぐらに、高度成長の歩みを突走ることになる。そして賃金と物価の悪循環はつづくものの、一般の生活は遙かに戦前を抜いて、住宅の新築も目立ち、あるいは新築とまではいかないでも、なんらかの改造・補修が行われない家は、ほとんど見られなくなった。四十年代後半には、自家用自動車が一家に一台になろうとしてきた。一方農業の機械化も進み、大型耕耘機・田植機・自脱コンバインの時代を迎え、農家はそれによって浮いた余力を、農外収入の道に投じている。