茅葺(かやふき)屋根の民家が少なくなった昨今、昔ながらの間取りを今に伝える家も減少しつつある。そのうち百年前後経った民家の間取りは、広間(ひろま)型を基調とし、四間取広間型が多い。時代が下り、特に戦後の建築では、広間の名のある部屋を残しつつも、田の字型に近い間取りが多くなっている。
広間は、庚申講や冠婚葬祭などの諸行事・老夫婦や子供の寝室などというように、多目的に使用されたが、裏座敷の空間の拡大・また間仕切りによる広間の分割によって、小間取り型へ移行してきた。しかし、小間取り型の家でも、障子やふすまなどの間仕切りをとると、行事に対応できる広い空間がとれる。
広間と共に重要な要素は土間である。入口から向って右側に土間部分がある場合を右住い、反対を左住いと呼ぶが、地域性はなく、道路に面した家は道路と反対側に土間部分をつくるようである。単に土間というと、農家では作業場に使用する部分のみを指し、またこの土間をダイドコロと呼ぶ場合は、ウマヤ・釜場・風呂場も含まれる。
板の間は、土間に接して設けられ、イロリを中心に板敷きになっており、家族の居間兼食事の場であり、また応接の場でもある。
板の間の上に続く広間を勝手(かって)と呼んでいる。勝手にはウエノイロリが切られ、多くの家はこの間に仏壇や神棚を設けている。
座敷は普通二部屋で、下の座敷・上の座敷などといって区別している。座敷は上客の接待や家の儀式に用いられるが、家族が多い場合は家族の部屋にも使用される。普段はふすまで仕切られているが、いつでも取り除いて使うことができる。また、床の間が設けられている。
普通、この座敷の奥に納戸(なんど)があり、常時は物置のように使われるが、家族が多いと部屋になったり、また産室にも用いられた。
納戸と広間と板の間にはさまれた部分を、裏座敷とか部屋などと呼ぶ。若夫婦の寝室になったり、物置きとして使用されたりする。
家を取りまくように回り縁がどこの家にも設けられ、回り縁の奥には手水場(ちょうずば)と呼ばれる内便所がある。