(5) 家造りと建築儀礼

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 地鎮祭 地祭りともいう。大黒柱の立つ位置、または建てようとする家の中央に三尺四方に笹竹を立て、しめ繩を張り、中に祭壇を設ける。米・豆・麦・尾頭つき・塩の五穀・御神酒・水の供物を置いて、普通の場合は神主によって祭りがとり行なわれる。お祓い・祝詞奏上・四方固めが行なわれる。土地の神の怒りを鎮めるための儀式である。
 建て前 上棟(じょうとう)式、また棟(むね)上げともいう。地鎮祭には神主が式をとり行なったが、建て前の場合には大工棟梁(とうりょう)がその役にあたる。建て前の中心はむなたたきで、水引きをまいた玄のうないしは掛け矢で、棟を三回ずつ三か所たたく。式終了後ぐし餅まきがある、棟梁が四方へ隅銭(すみせん)と一緒にまいた後、参列者全員でまく。このとき特に、棟梁が桁(けた)の四隅に供えたすま餅を真先に取ると縁起がよいと言われている。また、この時拾った餅は焼いて食べるなともいわれる。建て前の時に鬼門(北東)に向けて立てる魔除けの弓矢には、女性の髪道具一式をつける。なお、家が建て終ると、わたましといい、大工や親戚・組内の人達を招いてふるまう。

建て前

 屋根葺(ふ)き 茅葺き屋根の場合、普通では三〇年ぐらいで葺きかえなければならない。屋根材料の茅は、共有または自家の茅場から得る。屋根葺きは一度に全部行なうのではなく、表半分裏半分というように、半分ずつ行なう。茅場の茅刈りは、テツダイッコと称し、坪内の人々が協力して刈ってくる。屋根葺きの職人を茅手(かやで)と呼び、会津田島、湯の上付近からの出稼ぎ人を頼んだという。屋根下で材料を調整したり、運搬したりする人を地走(じはし)りと呼んでいるが、これは茅刈りの場合と同じくテツダイッコで、互いに労力の交換をはかっている。なお、この屋根葺きの時、それまではずさなかったお釜様のしめをはずし、屋敷内で焼く。