本村の祭りで、民俗的に見て興味深いものをいくつかあげておく。まず、第一番目は光丸山の縁日である。光丸山は神仏習合の名残りを今にとどめる信仰をもつことと、北関東最大と言われる天狗面が奉納されていることで知られる寺で、この祭りは、ひと昔前の神と仏が同居する形での庶民の信仰の姿を、実によく私たちに教えてくれるものがある。また八月十四日の大捻繩引(もじひ)きは盆綱引きの一つであり、祖霊の供養と秋の稔りを祈り、しかも、その作柄を占うという呪術的な色彩をも帯びた佐良土地内をあげての綱引きである。栃木県内にもこの種の綱引きがいくつかあったが、現在では佐良土の大捻繩引きと真岡市中里のものを残すのみとなっている。片府田や湯津上の天祭は、すでに見ることのできない祭りであるが、今でもこの祭りを経験した古老から語ってもらうことはできる。天祭(てんさい)とは天念仏(てんねんぶつ)などとも言われ、日天・月天など十二天をまつり、天棚をかけ、行人(ぎょうにん)が天棚上にのぼり風雨順次・五穀豊穣・家内安全・天災除けを祈る祭りである。この祭りは三日三晩続けて行なわれたが、天災行事になくてはならないものが天祭囃子(はやし)で、この天祭囃子はかつての本村の若者たちの信仰とレクリエーションの姿を高らかに演奏したものといえる。
信仰の項では、村内外の神仏信仰と信仰的な講集団について簡単に述べておく、本村の講集団で特筆しなければならないのは、農民の作神としての信仰をもつ庚申(こうしん)講である。本村では庚申講は庚申さまとか、お庚申さま・かのえさまなどと呼ばれ、他の講集団に比して講中の数も多く、ほぼ全村にわたっておこなわれてきたところにその特色がある。女人の講中としては十九夜講があげられる。十九夜講は十九夜の月を待つ女人の講であるが、最近では多分に娯楽的な色彩をおびてくるようになった。