禁忌と俗信

508 ~ 509
「産後の身体をおてんとう様にあてるとバチがあたる」との俗信があり、この地方の人々はそれを信じバチを恐れていた。このため薄暗い納戸で出産したり、産後も笠をかぶって便所(便所が屋外にある家の場合)に行ったり、腰巻きも藁で隠して干したりした。また、入浴も「湯の神様のバチがあたる」といって百日間はしなかったという。これらは自他共に赤不浄を意識していたということのあらわれであろう。その他、「お乳(ちち)があがるから柿の木の下を百日間は歩くな」「お乳があがるから百日間は柿の実を食べるな」との禁忌や、「ヘソの緒が袈裟(けさ)がけになって産まれ出た子は坊様の生まれ変わりである」「袋子は身体が弱い」「男の子が母に、女の子が父親に似ていればその子は果報持ちで運が強い」などの占い的な俗信が現在までも言い伝えられている。産後の食べ物に関しては、「甘い物を食べるとお乳があがってしまう」との俗信から塩味のものをとることが多かったという。特に産後三日目には塩入りぼた餅を食べる習わしがあった。