婚約成立まで

510 ~ 510
通婚圏(結婚相手の所在範囲)は、村内か近隣の町村であることが最も多く、農家では家族の労働力を増したいとか、資産を減少したくないなどの事情もあったため、一般に早婚であり近親結婚もあった。結婚相手は、互いに先方の血統・財産・家族の人柄および本人の容姿修行品行などを調査、または見合いなどして選ぶのであるが、結婚をする本人よりもむしろ両親の意見の方が尊重されたようである。媒酌(ばいしゃく)人を仲人様(なこうどさま)と呼び、後々もめごとがあっても片寄った審判がされぬよう双方共一人ずつ立てた。もちろん結婚相手が仲人好きな人の紹介であることもあった。縁談が内定すると樽入れ、または口固め(くちがため)と称して、それぞれの仲人二人で五合ずつ一升の酒を携帯し、貰い受ける方の家が後になるように訪問して結納の品定めや式の日どりなどについて協議し婚約を結ぶ。

角樽(つのだる・シメダル)