人の死の知らせはただちに組内に知らされる。これから先は組内の人達が葬儀一切の世話をすることになる。組内の役割は、飛脚・料理・装束づくり・帳場・買い出し・墓穴掘り・陸尺(ろくしゃく)などである。飛脚は二人飛脚と称するように、必ず二人一組で出発した。飛脚には船賃や草鞋(わらじ)銭など必要経費が手渡されるが、それを飛脚銭と呼んだ。飛脚を受けた家では酒肴(さかな)でもてなすのがならわしであった。喪家内においては死者に供える枕飯(まくらめし)が炊かれる。最近はガスや電器の炊飯器で炊くが、それ以前には、イロリの上の梁から左捻(よ)りに捻った繩のカギツルシをさげ、鍋をかけて、米はとがずに炊いた。枕飯は故人が生前愛用していた器に山盛りに盛られ、その中央に箸を垂直に立てて遺体の枕元に置かれるが、やがて仏壇に移され、野辺送りの際には故人の妻もしくは相続人の妻によって墓まで運ばれ墓標の手前に置かれる。また、六合(ろくごう)に盛られるダンゴや九個の餅も湯津上・狭原地区においては冥土に旅立つ土産としてつくられる。