湯灌は、血縁者や生前恩を受けた人々によって、日が暮れてから約一時間後に行われる。まず居合わせた人は全員、湯灌の前に出される酒・煮豆・豆腐をたいらげねばならない。その後畳をあげ、藁を敷き、その上にムシロを敷いて、タライの水に湯をさしたぬるま湯を用い、施主みずからフンドシ一枚の姿になって洗った。その間は線香を燃やし続け、湯灌がすむと使用した手拭いや下着および故人の不必要になった物品などを線香を用いて焼いてしまう。残った湯は堆肥の上に捨て流した。湯灌が終ると入棺が行なわれる。入棺に際しては、組の女達がつくった白装束を遺体に左前に着せる。そして棺に納められるが、数珠(じゅず)・六道銭(ろくどうせん)・頭陀袋(ずだぶくろ)・その他故人が生前愛用していた品物や花などが添えられる。死者の白装束は、ものさしやはさみを使わずに、糸は結び目をつけずに縫い上げるのがならわしである。夏はひとえ、冬は綿入れなどである。棺は立棺で、野辺送りにはみこしのような棺台に納められ、陸尺によって墓までかつぎ運ばれた。