ある人が川で鮒(ふな)釣りをしていたところ、川向うの崖で狐が昼寝をしていた。それをめがけて、いたずらにこちらから石を投げつけると狐は驚いて一足飛びに逃げていった。その夜鮒釣をしていた人の家では、いつものように皆寝入っていた。夜中であったが、子供の泣き声を聞いた隣のとりあげ婆さんは、不審に思って表へ出てみたところ、隣家の勝手の方でやけに泣いているので行ってみることにした。「やあ、こっちではどうしたんだい。赤ん坊が勝手もとで泣いてんでねえか。」と声をかけた。その声で目をさました母親は、子供の姿が見えないので驚いて明かりをつけ、泣き声の方へ行った。すると子供はいろりの中でころがったのか、灰だらけの姿になって泣きじゃくっていた。火が残っていたら死んでしまっていたであろう。