狢(むじな)にばかされた話

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むかし、猟師たちが集って獲物をとりに出かけた。今の狐くぼへ行ったところ、狢がいて穴の中へ逃げ込むのを見つけた。これさいわいと皆で穴を掘り、いよいよ狢をつかまえようというとき、寺が焼ける半鐘がジャンジャンなった。これは狢どころではないとなり、山の木を急いで切って入口に立て、狢が逃げられないようにしておき、みんなで帰ってみた。ところが、どこを見まわしても火事が無い。これは狢のやつにばかされたと、急いで山へ戻ってみるともぬけのからで、すでに狢が逃げたあとであった。