むかし、ある人がお伊勢詣りに行った。帰り道に一休みしていると、そばで蛇がかえるを飲み込もうとしている。思わず可愛相になり、「その奴を助けてくろ。そのかえるを助ければおまえの願いをきいてやる。」と大声でさけんだ。すると蛇は「娘を嫁にくれるか」と聞き返した。「娘は三人いるので、どの娘か一人やる」と約束してかえるを助けてやった。父親は家に帰ってそのことを娘たちに話したところ、長女は怒り、二番目の娘も「そんな蛇の嫁様に行く人ねえ。」ととり合わず、三番目の娘が「それでは私が行きましょう。しかし行くからには千生りふくべ千個と針を千本買ってくろ。」といって引き受けてくれた。娘は千生りふくべに針をつけて口をふさぎ、繩へ通して持っていった。大きな池で娘は蛇に「この千生りふくべを全部池に沈めてくれたらあんたの嫁様になってやっから。」と言って千個のふくべを池に浮かべた。蛇は夢中になってふくべを沈めようとしたが、とうとう沈め切れずに、ふくべの口に刺しておいた針にささって死んでしまった。娘は無事に家へ帰ることができた。