(一) 明治二十一年、市制・町村制の制定以来、市町村は地方自治体となり、市町村会の議員は選挙によることとなったが、最初はやはり制限選挙制で、満二五歳以上の男子で、二年以上その市町村の住民であり、地租または直接国税二円以上を納める者に選挙権が与えられた。しかし、ここには等級選挙制が設けられ、納税額の多少にしたがって、市においては三級、町村においては二級に分けて、各級ごとに議員定数の三分の一、また二分の一を選挙する制度であった。
(二) 大正十年の改正 選挙権を拡張して、二年以上その市町村において市町村税を納めておればよいこととなった。級別選挙も町村では廃止され、市では二級選挙に改められた。
(三) 大正十五年の改正 その前年、衆議院議員の普通選挙制が制定されたのに応じて、地方議会においても納税の制限が撤廃され、普通選挙制が採用され、市の等級選挙制も廃止されて平等選挙制となった。
(四) 昭和二十一年の改正 戦後最初の改正は、衆議院のそれと同様、男女平等の普通選挙制として、居住要件も六カ月その市町村に住所をもっておればよいこととなった。市町村長は昭和二十一年の改正までは、大体市町村会がこれを選挙する間接選挙制であったが、これより以降住民の直接選挙によることとなった。
府県会議員の選挙は明治二十三年の府県制のもとにおいては、市会および郡会で選挙する間接選挙制であったが、明治三十二年の改正によって住民の直接選挙制となり、大正十五年の改正による制限は撤廃された。
都道府県知事は以前は地方長官として政府の任命する官吏であったが、昭和二十一年の改正によって住民の直接選挙するところとなった。
参議院議員の選挙制度は、選挙区が地方選挙区と全国区に分れるほかは、衆議院議員のそれと大した相異はない。その後国会にも地方公共団体にも本質的な改正はなく、昭和二十五年には別々であった各種の選挙法を整理して、公職選挙法一体にまとめられ、現行法となっている。