一般に軍人軍属の遺家族に対して、その生活を援護する目的で行なわれる諸施策をいう。
日本における旧軍人軍属の戦死およびゆくえ不明者は昭和十六年以後だけでも約一八〇万人(経済安定本部調)、遺族数は一七六万九七八世帯、三六〇万六、八二四人(昭和二十七年厚生省調)に達している。
昭和二十年十一月、連合国最高司令部覚書により軍人恩給が停止され、さらに昭和二十一年二月勅令によって廃止され、また同年九月軍事扶助法が廃止されて困窮遺族も一般困窮者と差別することなく生活保護法によることとなったが、昭和二十七年四月対日平和条約の発効に伴ない、同月三十日公布された〈戦傷病者戦没者遺族等援護法〉(昭和二十七年法律第一二七号)によって四月から遺族に対し遺族年金および弔慰金が支給されることとなり、ここに遺家族援護復活の端が開かれた。ついで昭和二十八年八月恩給法一部改正法の成立により、軍人恩給が復活し、軍人遺族には扶助料が給付されることとなり、援護法の遺族年金から恩給法に切りかえられることになった。
したがって現在では援護法は主として軍属(旧海軍部内の雇用人、船舶運営会所属の船員など)、準軍属(徴用工、動員学徒、国民義勇隊員、防空監視隊員など)の遺族および軍人遺族であっても内縁の妻のように恩給法の対象とならないものなどを対象とするものとなっている。
現在の援護法による遺族給付としては軍人、軍族の遺族に対して遺族年金、準軍属の遺族に年金たる遺族給与金がそれぞれ支給される。金額は昭和二十五年の改正で遺族年金が先順位者一人一五万七、〇〇〇円、他は一人につき七、〇〇〇円、遺族給与金は同じく一〇万九、五〇〇円と四、九〇〇円(ただし徴用者の場合は一二万五、六〇〇円と五、六〇〇円。なお軍人、軍属、準軍属であった者が障害年金受給者で公務傷病外傷病で死亡したときの遺族についてはそれぞれ前記の七五%)である。このほか、これら軍人、軍属、準軍属の最先順位の遺族に対し額面五万円(昭和五十年法律第一〇号改正にて二〇万円となる)(準軍属の場合は三万円)の記名国債による弔慰金の支給が行なわれている。遺族の範囲および順位は死亡者の死亡当時の配偶者(事実婚配偶者含む)、子、父、母、孫、祖父母、入夫の妻の父母となっており、弔慰金の場合にはこのほか死亡者の兄弟姉妹、三親等内の親族にまで及ぶこととなっている。なお〈旧軍人等の遺族に対する恩給等の特例に関する法律〉(昭和三十一年法律第一七七号)による特例遺族年金の制度がある。このほか遺族援護の法律として〈戦没者等の妻に対する特別給付金支給法〉(昭和三十八年法律第六一号)、〈戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法〉(昭和四十年法律第一〇〇号)、〈戦没者の父母等に対する特別給付金支給法〉(昭和四十二年法律第五七号)がある。
戦傷病者戦没者遺族等援護法による遺族年金受給者は一四万七、〇九四人、同遺族給与金四万三、一二五人(昭和四十五年三月末日現在)である。なお四十五年十月から戦没者遺族相談員制度が設けられており、民間篤志家(四十五年三月末現在五三二人)が厚生大臣の委託をうけて業務を行なっている。