第二次世界大戦前すでに存在した農地調整法(昭和十三年法律第六七号)、小作料統制令(昭和十四年勅令第八二三号)、臨時農地価格統制令(昭和十六年勅令第一〇九号)、臨時農地等管理令(昭和十六年勅令第一一四号)は戦後にいたり農地調整法に吸収され(昭和二十年法律第六四号)、別に自作農創設特別措置法(昭和二十一年法律第四三号)等が制定され、ここにいわゆる農地改革が始まった。そして、この農地改革が一段落し、また日本に対する連合国の占領も終了したことをも契機として、農地調整法、自作農創設特別措置法及び農地調整法の適用を受けるべき土地の譲渡に関する政令(昭和二十五年政令第二八八号)の三本立ての複雑な法制を一元化し統合するものとして、〈農地法〉が制定された。
この農地法は、現在農地に関する特別法令の基本法をなすものであり、いわゆる農地改革の成果を維持し、またその方策を継続せんとするものである。その内容は次のとおりである。
(1) 農地または採草放牧地の所有権移転、質権等の権利の改定および転用の制限。都道府県知事(農業委員会)の許可を必要とする。
(2) 小作地等の所有の制限
(3) 対抗力。農地または採草放牧地の小作権はこの土地の引渡しによって第三者に対抗できる。
(4) 解約の制限。正当な理由がなければ小作契約の解約もしくは更新拒絶をなすことはできない。正当な理由があってもそれについて都道府県知事の許可を受けなければならない。
(5) 小作契約は文書によってなさねばならない。
(6) 小作料は必ず定額金納とする。農業委員会は、その区域内の農地につき、その自然的条件と利用上の条件を勘案して必要な区分をし、その区分ごとに標準小作料を定めることができる。小作料の額が収穫された価格に対して一定割合に達したときは減額請求できる。
(7) 薪炭・肥料等のための採草等に他人の土地を利用する権利の設定について裁定を求められること。
(8) 農業委員会の設置。
なお、前記農地法に関連するものとして、農業委員会等に関する法律(昭和二十六年法律第八八号)、自作農維持資金融通法(昭和三十年法律第一六五号)などがあり、昭和四十年には、農地被買収者が不当に安い価格で買収されたというので、給付金を支給するために、〈農地被買収者等に対する給付金の支給に関する法律〉(昭和四十年法律第一二一号)を制定した。